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建設的ジャーナリズムとは何か

ネガティブ性払拭へ  権力監視との共存必要

清水麻子/林香里

差別主義者と議論ができるか

 欧州では、難民受け入れや英国のEU離脱をめぐり社会や政治が二極化しており、深刻化する分断をどう解消していくかが、建設的ジャーナリズムの今一番の関心事のようであった。

 ドイツの高級週刊新聞Die Zeit記者のバスティアン・バーブナー氏からは、18年10月、ZEITオンラインで掲載した分断解消を促そうとするシリーズ「ドイツ協議」(https://www.zeit.de/gesellschaft/2018-09/germany-talks-discussion-argue-constructively-political-adversaries-englisch)の取り組みが発表された。

 思想や価値観の異なる政党員や、ネオナチといった差別主義者と、実際に会って話を重ねることで、互いの意見に歩み寄ることができるかという可能性を探る建設的な視点の発信である。

 異質な他者との「類似性」(Similarities)の模索がテーマで、コロンビア大学の心理学者、ピーター・コールマン教授が進める「敵と思える人との会話(Dialogue)プロジェクト」と連携し、アカデミズムやNPOと共同で理論的工夫をこらした点も披露された。

 バーブナー氏は、ネオナチでドイツ極右政党NPD党員の男性と会話を重ねた試みを紹介しながら、「最初のうちは、彼は特定の人種への差別的偏見を語り、それはひどい内容だったのだが……」とユーモアを交えて語ったうえで、「そんな彼が会話を重ねるうちにシリア人などの難民受け入れに賛同し、気候変動に対しても想像以上に進歩的な立場を表明したので驚いた」などと、融和の可能性を語った。

 英国公共放送BBCからは、18年4月から配信した、社会の様々な「分断」「対立」を崩すための「Crossing Divides」(https://www.bbc.com/news/world-43160365)シリーズが紹介された。

 政治や社会の分断を、インターネット上のフィルターバブルが加速させる現代に、異なる政治信条、異なる宗教、異なる人種、異なる階級、異なる年齢の人同士の分断と不寛容は勢いを増している。

 シリーズではこうした異なる価値観や分断を超えて、対立する他者同士が繋がる方法が模索された。例えば、米国のトランプ大統領を支持する人々と、支持しない人々との対話である。

 議論が熱くなれば、喧嘩で終わってしまう可能性もある。そこで対話は、料理を囲みながら、また中立的なファシリテーターの介在を通して行われた。

 加えて公式サイトには、異なる価値観を持つ人と遊び感覚で談話に参加できるゲームを掲載し、擬似会話を続けることで、他者を理解してもらうことを促した。例えば、高齢者と若者という異なる世代間ギャップの対話ゲーム「GENERATION DIVIDE」では、安定した結婚や職業の継続が重要と考える「祖母」と、それに反する価値観を持つ「孫娘」のどちらかを選び、「自分ならこう答えるだろう」という回答を選んでいくゲームである。行きすぎた回答を選ぶと「相手が心配していることに理解を示してみてください」などと断絶を回避するようなメッセージが画面に浮かぶのが特徴的である。

 同様に、銃規制や英国のEU離脱、移民問題など考えが二分する社会問題に関しても、同様のゲームが設けられた。

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