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「休ませる国」から「休む国へ」

「第3の時間」がイノベーション生む

常見陽平 千葉商科大学国際教養学部専任講師

 「休むべきか、休ませるべきか、それが問題だ」

 シェークスピアの『ハムレット』風にこう言いたい。これが「日本人は、なぜ休めないのか?」という問いの根底にある問題である。国や企業が従業員を(少なくとも制度上は)休ませようとするのか、個人が自由に休みを取るのか。前者が日本型、後者が欧米型である。そして、「一斉」に「国」や「企業」が「休ませる」という休み方は現在の日本の産業構造や就業構造、さらには直面している社会問題に必ずしも合致していない。

 24時間営業社会、長時間労働社会を是正するためには、「休み方」を改革しなくてはならない。「働き方改革」と「休み方改革」は一体である。そうであるがゆえに、日本人の「休み方」の問題は「働き方」の問題と密接に関係している。「仕事に人をつける」のではなく「人に仕事をつける」という雇用システム、仕事の絶対量や役割分担、突発的な仕事への対応、過剰なクオリティー、チームで働くことなど、日本はもともと残業を誘発しやすく、柔軟に休みにくい。

 日本人の休み方の問題とは何か。改元に伴う10連休、プレミアムフライデーなどをケーススタディーとして取り上げつつ、その核心に迫る。日本人の休み方に関するジレンマを考えることにする。

10連休、「うれしくない」が多数

 30年続いた平成が終わった。今年の大型連休(GW)は、改元のため、10連休だった。

 合理的に考えると、10連休は歓迎されるべきものであるはずだ。旅行、飲食などレジャー消費も期待される。

 ただ、国民の反応は必ずしも好意的ではなかった。10連休が発表された後の、2018年12月15日、16日に朝日新聞社が実施した全国世論調査(電話)によると、2019年のGWが10連休になることについて尋ねると、「うれしい」は35%で、「うれしくない」の45%を10ポイント下回っていた。

 時事通信社が2019年3月8~11日に全国の18歳以上の男女2000人に対して個別面接方式で実施した「10連休に関する世論調査」(有効回収率61.2%)によると、GWが新天皇の即位に伴い10日連続の休祝日になることについて、「とてもうれしい」9.3%、「まあうれしい」27.2%という「うれしい」の計36.5%に対し、「全くうれしくない」14.8%、「あまりうれしくない」26.2%の計41.0%が「うれしくない」と回答する結果となり、「うれしくない」が「うれしい」を4.5ポイント上回った。

 うれしくない理由(複数回答)は「仕事をしていないので関係ない」が28.0%で最多となった他、「仕事を休めそうにない」が19.3%、「家事の負担が増える」が10.8%、「仕事に支障がある」が9.6%だった。「今後も国が主導して長い連休をつくるべきか」との問いには、「そう思う」の29.9%に対し、「そう思わない」が66.8%となった。

 10連休中の各種サービスの対応も懸念された。ライフラインをどうするか。特に医療、ごみ収集、郵便、保育、電気・ガス・水道などの対応が懸念された。政府は4月16日に対応策を発表した。

 連休は誰もが休むことができるわけではない。平成の約30年で産業構造も就業構造もサービス産業によりシフトした。今や、GDPベースでも就業者ベースでも約7割がサービス産業だ。サービス産業の中には休日に稼働することが前提となっている業種・職種もあるため、必ずしも10連休に休むことはできない。

 非正規雇用者の収入減も懸念された。雇用形態において、非正規雇用者の比率が約4割となっている。非正規雇用者は働いた日数や時間など稼働が所得に直結するからだ。

 平成・令和の10連休は社会実験だったと私は捉えている。ここで可視化されたことは何か。一斉の休暇が必ずしも歓迎されないということ、さらには産業構造・就業構造の変化、働き方の多様化により必ずしも休むことができない人やそれがむしろデメリットになる人がいることだ。この10連休自体が、新時代の休み方について一石を投じるものだった。

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筆者

常見陽平

常見陽平(つねみ・ようへい) 千葉商科大学国際教養学部専任講師

1974年生まれ、札幌市出身。一橋大学商学部卒。同大大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、ベンチャー企業、フリーランス活動を経て2015年4月から現職。専攻は労働社会学。主な著書に『働き方改革の不都合な真実』(共著、イースト・プレス)、『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社新書)、『社畜上等!』(晶文社)など。