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現実から物語へ、物語から現実へ

フィクションの強さを知る10冊

木皿泉 脚本家、小説家

フィクションをあなどらない

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 私たちが「すいか」というテレビドラマを書こうと思ったのは、バブルは崩壊したのに、まだ気分的には消費至上主義で、「なんだかんだ言っても、お金が欲しいくせに」と言われれば、黙ってしまうしかない頃だった。反論すると、「またまた無理をして」と言われてしまう。だから「そうじゃないんだ」ということを、ドラマでやってみようと思ったのである。しかし、そんなことを一回やったくらいではどうにもならないだろうと思っていた。最低、三回ぐらいやらないと伝わるわけがないと思っていたのだ。しかし視聴率こそ悪かったが、このドラマは一部の人に熱狂的に支持され、それは徐々に広がり続け、十六年経つ今もそれは続いている。

 私自身、フィクションというものをあなどっていたのかもしれない。ある時期、商品名に「○○物語」とつけるのが流行った。商品スペックで謳う性能や見た目の差異で売ることが限界にきていたのだろう。消費させる側は物語の想像力に目をつけたのだ。フィクションほど人を熱狂させるものはないのである。

虚構とは何か

 そもそも物語は上に立つ人のものだった。大きな物語をつくって多くの人を動かしてきた。宗教や革命がそうだし、資本主義はサクセス・ストーリーで成立している。しかしグローバリズムの世界は、そういう大きな物語すら使い果たしてしまった。なので、今は数字だけの、つまり何もかも同一単位で表される身も蓋もない世界に私たちは生きている。

 フィクションにそんな現実を覆す力があるのかと思う人は、

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筆者

木皿泉

木皿泉(きさら・いずみ) 脚本家、小説家

木皿泉はペンネーム。和泉務(いずみつとむ)と妻鹿年季子(めがときこ)による夫婦ユニット。神戸市在住。テレビドラマ脚本作品に「すいか」(日本テレビ系)、「野ブタ。をプロデュース」(同)、「セクシーボイスアンドロボ」(同)、「Q10」(同)、「富士ファミリー」(NHK)など。小説に『昨夜のカレー、明日のパン』(河出書房新社)、『さざなみのよる』(同)、『カゲロボ』(新潮社)など。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです