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メディアスクラムの中で失いかけた私の〝原点〟

島袋夏子 琉球朝日放送ニュースデスク

事件を身近に感じる

 犯人が逮捕されると、報道は落ち着くかに思われたが、本番はここからだった。火をつけたのは、全国紙だ。記者が被害者の葬儀に参列し、その様子を書いていたのだ。

 家族を失ったばかりの被害者に接触するのは、はばかられると思っていた。ましてや葬儀という厳粛な場に、親族でも、友人でもない、他人が入り込むなんてどうなのだろう。

 だが、その記事を読み、東京からディレクターがやって来た。夫にインタビューのアポイントメントをとったのだという。完全に出遅れた私は、彼に同席させてほしいと頼み、ついて行った。そこで初めて会ったのが、遺族で夫の本村洋さんだった。

 初めて接する、犯罪被害者と呼ばれる人は、想像とは違っていた。年齢は、私より1つ年下の23歳。ボーダーのTシャツにジーンズ。まだ少年のようなあどけなさが残る、どこにでもいる痩せた青年だった。

 けれどそれが逆に、衝撃的だった。あまりに普通だったからだ。事件に巻き込まれるのは、自分たちとは違う人たちだと思い込んでいた。

 彼の人生はこれからどうなってしまうのだろうか。

 犯罪被害者になってしまった同世代と対面し、急に事件が身近に感じられた。

 その日、本村さんは残業を終えて夜9時半ごろ帰宅した。部屋には

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筆者

島袋夏子

島袋夏子(しまぶくろ・なつこ) 琉球朝日放送ニュースデスク

1974年、沖縄県生まれ。琉球大学法文学部卒。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。14年「裂かれる海~辺野古 動き出した基地建設~」で第52回ギャラクシー賞番組部門大賞、16年「枯れ葉剤を浴びた島2~ドラム缶が語る終わらない戦争~」で日本民間放送連盟賞テレビ報道部門最優秀賞など受賞。早稲田大学次世代ジャーナリズム・メディア研究所招聘研究員。