メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

差別扇動に国も加担した「ヘイト問題」

問題の本質は「表現の自由」ではない

安田浩一 ジャーナリスト

差別集団の隊列に加わった政治家

 その在特会とも連携し、地元愛知県で差別扇動活動を展開してきた右派グループも、閉幕まで連日、「不自由展」に対する抗議を続けた。会場近くの路上で、ときに在特会の後継団体と目される日本第一党の幹部などを招いて街頭宣伝をおこなったが、よりにもよってそのような差別集団の隊列に加わってしまったのが、名古屋市の河村たかし市長だった。

 河村市長が会場前の路上に姿を現したのは、「不自由展」再開初日の10月8日。そこでは、前述した右派系団体メンバーらが街頭宣伝をおこなっていた。河村市長はその場で一緒に座り込み、「公金不正使用を認めるな」とスピーチ。メンバーらが繰り返す「大村(愛知県知事)やめろ」のシュプレヒコールに合わせてこぶしを突き上げた。

 同団体メンバーらは、これまで、名古屋駅前などで〝日韓断交〟を訴える街頭宣伝を繰り返してきたほか、地元在住の中国人が旧正月を祝う「春節祭」の会場近くにも押し掛け、妨害目的の街頭宣伝をおこなってきたことで知られる。

 地元で反差別運動に取り組む市民の一人は同団体を「紛うことなきヘイト団体」だと断言した。

 「〝愛国〟をスローガンとしていますが、内実は偏狭で排他的なナショナリズムを訴えているだけ。今年4月には、市内で開催された韓国フェスティバルにぶつける形で、これに反対する街頭宣伝をおこなっています。参加者らが掲げたプラカードには『売春大好き・韓国』『韓国コワイ』などと記されていました。そうした団体の隊列に加わるなど、首長の行動としては信じられない暴挙です」

 名古屋市は〈互いの文化的差異を認め合い、対等な関係を築きながら、地域社会の構成員として共にしあわせに生きていくことができる多文化共生都市を実現〉といった多文化共生推進プランを掲げている。

 これを率先垂範すべき立場にある市長が自ら、外国人差別を扇動するグループと〝共闘〟したのである。

 こうした行為は市が掲げる理念に対する裏切りであると同時に、行政の〝ヘイト加担〟だと思われても仕方なかろう。

 そもそも、トリエンナーレ開幕直後に少女像の展示が中止となった流れをつくったのも、

・・・ログインして読む
(残り:約5469文字/本文:約8010文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

安田浩一

安田浩一(やすだ・こういち) ジャーナリスト

1964年、静岡県生まれ。週刊誌、月刊誌などの記者を経て、2001年からフリー。『ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて』(講談社)で日本ジャーナリスト会議賞と講談社ノンフィクション賞受賞。「ルポ 外国人『隷属』労働者」(「G2」)で大宅壮一ノンフィクション賞雑誌部門受賞。著書に『ヘイトスピーチ』(文春新書)、『団地と移民』(KADOKAWA)、『愛国という名の亡国』(河出新書)など。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです