2020年04月22日
出生数が史上初90万人を割りこんだ。
こんなニュースが、2019年12月にテレビ・新聞・ネットなど多くのメディアで取り上げられ、話題となった。人口動態調査(年間推計)において、2019年の出生数を86万4千人とした推計が発表されたことによる。このニュースに対し、政府の長年の少子化対策の無策ぶりを批判する声もあがったが、実は、出生数が90万人を割りこむことは、1997年時点で厚労省及び国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研という)は予測済みだったことをご存じだろうか。
推計には、高位・中位・低位の3種類があるが、最悪のシナリオとしての低位推計によれば、ご覧の通り、2019年までの出生数の予測はその後の実績とほぼ寸分狂いなく、驚くほどドンピシャに当たっている。出生数が90万人を割りこむことなど20年以上も前から想定されていたことなのだ(図1)。
日本の合計特殊出生率は2018年時点で1.42である。2.07といわれる人口置換水準には遠く及ばず、政府が目標として掲げる1.8とも大きな開きがある。前述した社人研による「中位推計」でも、今後1.45を超えることはなく、低位推計であれば1.27にとどまる。これらの推計は決していい加減なものではない。むしろ、出生や死亡に伴う人口予測は数多ある推計の中でもっとも的中率の高いものである。あえて断言してもいいが、今後日本の合計特殊出生率が大きく伸長することはないだろう。
この合計特殊出生率とは、15歳から49歳までの全女性のそれぞれの出生率を足し合わせて算出したもので、一人の女性が一生に産む子どもの数の平均といわれている。しかし、多くの人が勘違いしているが、全女性という以上、この中には、未婚の女性も母数に含まれる。よって、未婚率が高まればそれだけ合計特殊出生率も下がる。
結婚と出生は密接に関連している。日本は海外諸国に比べて極端に婚外子が少ない国だ。言い換えると、子どもは結婚した母親から生まれてくる例がほとんどである。であれば、日本での出生を考える際に、未婚も母数に含めた合計特殊出生率母数で考えること自体、実はあまり意味がない。
少子化というと、「結婚した女性1人当たりの出産数が減った」と考えがちだが、それは大きな間違いである。確かに、戦前及び終戦直後の第一次ベビーブームまでは4人も5人も出産した子沢山の家族が多かったというイメージがあるだろう。しかし、
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