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行儀良さより、闘うジャーナリズム

「何となく匿名」から原則の復権を

澤康臣 ジャーナリスト、専修大学文学部ジャーナリズム学科教授

報道倫理は誰に対する倫理か

 今年4月4日のニューヨーク・タイムズは、米ペンシルベニア州のハバフォード大学の女子学生たちのことを伝えた。一緒に寮で暮らし、今は新型コロナウイルス感染拡大の影響で親元に一時帰宅している彼女たちの一人、タチアナ・レジオンはプエルトリコ出身の両親を持ち、奨学金のおかげでこの大学に来ることができた。実家は食品移動販売で生計を立て、コロナ禍で窮地に陥った。家業を助けるため大学には戻れないかもしれない。他方、投資家の父を持つチェース・プリーはカリフォルニア州の海が見える高級住宅地に帰り、父が仕事で行ったことがある日本に家族で避難する案まで一時持ち上がった。仲間たちの経済格差がコロナ禍によって見えてくる。女子学生たちはニコラス・ケーシー記者の取材に実名で応じ、

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筆者

澤康臣

澤康臣(さわ・やすおみ) ジャーナリスト、専修大学文学部ジャーナリズム学科教授

1966年岡山市生まれ。東京大学文学部卒業後、90年に共同通信記者となり社会部、外信部、ニューヨーク支局などを経て、特別報道室で「パナマ文書」ほか調査報道や深掘りニュースを担当した。ニューヨークでは「国連記者会」理事に選出。2006~07年、英オックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所客員研究員。20年4月から現職。著書に『グローバル・ジャーナリズム 国際スクープの舞台裏』(岩波新書)、『英国式事件報道 なぜ実名にこだわるのか』(文藝春秋、ペーパーバック版は『なぜイギリスは実名報道にこだわるのか』金風舎)など。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです