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コロナ禍と香港の抵抗運動 国安法制定までに起きた相克

倉田徹 立教大学法学部教授

「防疫」盾に抵抗、弾圧

 デモが止まる一方、反政府感情が収まらない情勢下で行われた市民の防疫は、それ自体が抵抗運動の延長線のような特徴を示した。

 武漢からの感染拡大を受けて、医学者は全面的に中国大陸との間の通関を止めること(「全面封関」)を提唱したが、政府は受け入れなかった。深圳と陸続きで一体化した経済圏を形成する香港には、通勤・通学で毎日両地を往復する者も少なくない。また、大陸からの観光・買い物客が香港経済を支えていることも周知の事実である。政治的にも、世界各国でとられた中国人の入国制限措置を中国政府が批判していた状況下で、北京の影響が強まる香港政府は、大陸からの入境を拒絶する政策の導入を躊躇した。

 そうした中で、医師・看護師が、全面封関を求めてストライキを行うと宣言した。ストを発動したのは、抗議活動の最前線で負傷者の応急処置をしていた医師・看護師ら

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筆者

倉田徹

倉田徹(くらた・とおる) 立教大学法学部教授

1975年生まれ。専門は香港政治。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『中国返還後の香港―「小さな冷戦」と一国二制度の展開』(名古屋大学出版会、2009年、サントリー学芸賞受賞)、共著に『香港―中国と向き合う自由都市』(岩波新書、2015年)、共編著に『香港危機の深層』(東京外国語大学出版会、2019年)、共訳書に『香港の歴史』(明石書店、2020年)など。