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世界は変えずに人々を発見する PTAと野党の交差点

岡田憲治 専修大学法学部教授

エリートたちの「密教」

 しかし、この時投票所に足を運ぶだろう数千万もの有権者を前に、「我々の政策は間違っていない。あとはあなたたちが選ぶかどうかだ?」という冷たい足位置がたたずまいからにじみ出てきたなら、その瞬間に政治的敗北は確定する。「我々の政策は正しい。しかし政治(迂闊な政治家と市民)がそれを歪める」というのは、霞が関のエリートたちの「密教」である。だから永田町の野党は、そうした密教、楽屋の話を公的なメッセージにしてはならない。

 市井の人々は、野党代表のメッセージ「まっとうな政治」という言葉を瞬時にして脳内変換するだろう。それは「自民党に投票する人の見識は間違っていますよ。どうかしてますよ。もっと彼らの悪政を知るべきです」ということだろうと。もっと勉強してくださいと。そして心は閉じる。

 問われているのは、こう変換させる人々をどれだけ民主政治の友人にさせることができるかである。明らかなのは「これまで8年すべてこれに失敗してきた」という重い事実だ。例えば、野党支持者たちのため息を背にしながら、国民民主党を積み残した野党第一党がかつて好んで使った政治的用語の虚しさだ。「パラダイムシフト」「パリテ」「ボトムアップ」。どれも正しく、そして肝心の票田に伝わらない言葉で

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筆者

岡田憲治

岡田憲治(おかだ・けんじ) 専修大学法学部教授

1962年、東京都生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。立教大学法学部助手などを経て現職。専攻は政治学。地域生活に密着した自治実践を通じて、民主政治の新たな可能性を探究している。著書に『なぜリベラルは敗け続けるのか』(集英社インターナショナル)、『ええ、政治ですが、それが何か?』(明石書店)、『デモクラシーは、仁義である』(角川新書)、『言葉が足りないとサルになる』(亜紀書房)、『権利としてのデモクラシー』(勁草書房)など。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです