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同質の心地よさ脱し多様性を 英字紙の視角から得た気づき

大門小百合 ジャーナリスト、元ジャパンタイムズ執行役員・編集局長

命懸けの記者との交流

 その後、政治、経済と様々な担当を経験して数年たった頃、私に転機が訪れた。ハーバード大学のジャーナリストのためのフェローシップであるニーマンフェローに合格したのだ。このプログラムに参加したおかげで、私は英文記事の本場アメリカでジャーナリズムを研究するだけでなく、世界から来た自分と同じような記者たちとともに1年間学び、かけがえのない仲間になるという貴重な機会を得た。

 このプログラムには毎週「サウンディング」といって、ニーマンフェローが、自分の今までやってきた仕事について、発表するセッションがある。全員記者だが、働いてきた国も媒体も違い、彼らの話を聞きながら、ジャーナリストの仕事について考えさせられた。

 コロンビアで、マフィアの動きやドラッグの取引で儲ける政治家などのことを書き続け、政府からも反体制派からも狙われて、亡命のような形でニーマンフェローに参加したイグナチオや、ナイジェリアの独裁政権下で命を狙われながら、印刷場所を転々と移動しながら雑誌を発行し続けたサンディなど、日本では会うことのない、命を懸けて仕事をしてきた記者たちに会うことができた。また、中国の放送記者は、政治についてのドキュメンタリーを作ることが許されず、環境問題などに特化しながらも社会の問題点を報道してきた。制約のある環境の中で、いかにしてジャーナリストとして継続して報道し続けられるか頑張ってきた仲間たちだ。

 今でも忘れられないのはソマリアの難民キャンプや、コソボ戦争を取材してきたフランス在住のアメリカ人カメラマン、ピーターの言葉だ。

 「僕らには人の命を助ける力があるわけでもなんでもない。それでも働くのは、自分たちが写真に撮ったもの、書いたことがらを本当に気にかけているからだ」と彼は言って

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筆者

大門小百合

大門小百合(だいもん・さゆり) ジャーナリスト、元ジャパンタイムズ執行役員・編集局長

上智大学卒。1991年、ジャパンタイムズ入社。報道部記者を経て、2013年に執行役員編集担当となり、同社女性初の編集部門トップに。ニーマンフェローとして米・ハーバード大学でジャーナリズム、アメリカ政治を研究。20年9月に独立。14年から20年まで世界経済フォーラム主催のダボス会議メディアリーダー。著書に『The Japan Times報道デスク発 グローバル社会を生きる女性のための情報力』(ジャパンタイムズ)など。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです