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被爆地の新聞社と「ヒロシマの空白」

死を「仕方なかった」にしない覚悟

金崎由美 中国新聞編集局報道センターヒロシマ平和メディアセンター長

記録からこぼれ落ちたままの「名前」

 埋もれた死者を追うにあたり、人間の尊厳を象徴するものとしていくつかの柱を立てた。一つは「名前」である。

 広島市は最近1年間に死亡が確認された被爆者の名前を原爆死没者名簿に書き加え、毎年8月6日の平和記念式典の中で「過ちは繰返しませぬから」と刻まれた原爆慰霊碑の石室に収めている。

 名簿登載につながる主な情報源に、「原爆被爆者被災調査」として1979年に始まり、現在も続く市の「原爆被爆者動態調査」がある。事業所や学校単位で作成された古い死没者名簿から転記したり、死亡により被爆者健康手帳が返納された被爆者を加えたりして名前を積み上げている。それによると、「1945年末までの死亡者の確認数」は2019年3月末時点で8万9025人だと分かった。「14万±1万人」とのはざまに相当数の「埋もれた死者」がいることは確実だ。

 取材班は、遺族や生存被爆者を訪ね回り、体験手記を読みながら、「8万9025人」からこぼれ落ちた犠牲者を掘り起こしていった。たった一発で人命も行政資料も焼き尽くした核兵器の破壊力や、日本の無謀な戦争の末の市民の悲惨、広島の地域性など、さまざまな事情が浮かび

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筆者

金崎由美

金崎由美(かなざき・ゆみ) 中国新聞編集局報道センターヒロシマ平和メディアセンター長

北海道登別市生まれ。北海道大学法学部卒。1995年に中国新聞社入社。2020年から現職。連載「グレーゾーン 低線量被曝の影響」で17年科学ジャーナリスト大賞共同受賞。20年度新聞協会賞受賞作「ヒロシマの空白 被曝75年」取材班デスク。著書にサーロー節子自伝『光に向かって這っていけ 核なき世界を追い求めて』(本人との共著、岩波書店)。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです