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特ダネの記憶 NHKスペシャル㊦「全貌 二・二六事件」

海軍、事件7日前に詳細把握 最高機密文書から歴史の闇に迫る

吉田好克 NHK福岡拠点放送局放送部副部長

テープに残る「沈黙の提督」の思い

 そこでまず取りかかったのは自衛隊の草創期の取材だ。自衛隊は、旧日本軍が戦争への道を突き進んだという反省から、旧軍とは一線を画して、終戦から9年後の1954年に設立された。軍隊ではない自衛隊にどのような思いが託されていたのか、取材を進めていくと、ある日本海軍の元幹部にたどりつくことになった。

 終戦の年に大将に昇任したことから「最後の海軍大将」と呼ばれる井上成美だ。日独伊の三国同盟は戦争につながるとして米内光政、山本五十六とともに一貫して反対し、情勢を冷静に見極める理論的な判断をしたことで知られる。日本の敗戦や旧軍の実態について深い思いを抱いていたであろうが、戦後は横須賀の海に近い自宅でひっそりと暮らし、ほとんど人前に出なかったことから「沈黙の提督」とも言われている。井上は1975年に86歳で死去したが、将来の幹部自衛官を養成する防衛大学校の1期生に語った肉声がテープに残されていることが旧知の取材先からの情報でわかったのだ。防大1期生の一人が保管していたもので、取材の趣旨を説明すると快く応じてくれた。40年前に収録したというテープは見た目がやや古びていた。少し不安を感じながら再生してみると音声の状態は良好で、井上が約3時間にわたって将来の自衛隊を担う若者たちに優しく語りかける様子が録音されていた。

 その内容は、開戦への憤りや軍部が行った昭和天皇への虚偽の報告、特攻で部下の命が失われたことへの悔恨など多岐にわたっている。そして防大1期生へ、「自衛隊は

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筆者

吉田好克

吉田好克(よしだ・よしかつ) NHK福岡拠点放送局放送部副部長

1971年、宮崎県生まれ。95年NHK入局。報道局社会部や沖縄局、広島局、鳥取局を経て現職。社会部では自衛隊のイラク派遣や防衛省の日報問題などを取材。主な担当番組にNHKスペシャル「日本海軍400時間の証言」「核を求めた日本」「沖縄戦全記録」「変貌するPKO 現場からの報告」「憲法と日本人」など。取材班代表として、2015年度と17年度の新聞協会賞受賞。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです