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現実的な皇室典範改正が必要 男系男子を優先し、女性天皇も容認

所功 京都産業大学名誉教授

 現在の日本は、多くの難問に直面して、近未来への展望が容易に見通せない。その一つに皇室の在り方がある。

 皇室の在り方は、格別な来歴を持つ高貴な家(the Imperial Household)の問題である。従って、その長い歴史を踏まえて、現行憲法のもとで皇室を担う方々に配慮しながら、無理のない法制度を整備しなければならない。

 折しも政府では、この問題に関する有識者会議を昨春から開き、今年1月12日、その報告書を衆参両院の議長に提出した。それを読むと、決して十分なものとは言えないが、当面これを丹念に検討して、改革の第一歩を踏み出す必要があろう。

天皇一家2022年のえとにちなんだ「虎張子(とらはりこ)」について話す天皇ご一家=2021年12月、御所、宮内庁提供

 そこで、今回の報告書に示されている改革案の背景を見直し、その内容についての是非を指摘する。それがこれから進められる皇室典範の改正に必要な国民多数の合意形成に役立つことを念じている。

皇室典範は「国会が議決した」法律

 戦後に制定された日本国憲法は、「日本の皇室弱体化」を最重要課題とするGHQの原案に基づいている。ただ、それは日本国民が受け入れやすいように、明治以来の大日本帝国憲法と同じく、第一章に「天皇」というフレームワーク(枠組み)を設け、第三章の「国民」と異なる格別な存在としている。

 従って、天皇及び皇族たちは、一般国民に保障されているような自由(権利と義務)が原則的に適用されないのみならず、特別な地位・役割とその受け継ぎ方などが法的に規定されている。

 すなわち、その第一章に「天皇は、日本国の象徴(国家を代表する元首)であり日本国民統合の象徴(民意の統合状態を示す君主)」であるが、「この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」とする(括弧内はいずれも筆者の見解)。しかも、第二条に「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」としている。

 この両条を併せて考えれば、象徴天皇の地位(皇位)は、主権者である国民の総意(至高の意思)によって、「世襲のもの」(古来の天皇の子孫が受け継ぐべきもの)と規定されているのであるから、その時々の天皇や国民の意向によって左右されるものではない。

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