プラットフォームは敵か味方か(上)
2022年10月19日
世界各国で、新聞を中心とした報道機関の経営が困難になっている。部数減に加え、広告収入の減少が大きな理由だ。そんななか、オーストラリアでは2021年に成立した法律を受け、グーグルやフェイスブックなどのデジタルプラットフォームを運営する会社が、ニュースメディアに資金提供する仕組みが実現した。どのように運営され、他の国にも広がることはあり得るのか。現地で実態調査をした、米コロンビア大学ジャーナリズムスクールのビル・グルースキン教授に聞いた。
――オーストラリアの現状をどのように見ていますか。
グルースキン 今年1月から2カ月間、現地で調査をし、様々な関係者に会いました。最も大切だと思っているのは、かなり効果的に1億5千万米ドルほどを、(プラットフォームから)報道機関に向けたことです。資金を受け取った中には、非常に大きい報道機関もありますが、地方紙や公共放送も含まれております。こうしたお金が、ジャーナリズムの資金源になっているのは歓迎すべきことです。
根源的な問いかけとして、なぜフェイスブックとグーグルが資金提供を求められているのか、という問題はあります。報道機関の広告収入が減少しているのは、デジタル革命がもたらしたことであり、プラットフォームの行動だけによって生じているわけではありません。また、他のウェブサイトもあります。正直、これについてはいい回答はありません。ただ、私も新聞社で長く働いてきました。有料課金モデルのファンですが、特に地方の報道機関が非常に衰退し、民主主義にとって好ましくない状況になっていることは知っています。「合法的なお金であれば活用した方がいい」という立場です。
――課題としてはどんなことがありますか。
グルースキン 詳細は非常に不透明です。どの報道機関がどれだけの資金を受け、どのように使われているのかは明らかになっておらず、公的な記録も残っていません。例えば、(ルパート・マードック氏が率いる)ニューズ・コーポレーションへの資金が、会社内の新しいポジションを設けるのに用いられているのか、マードック家が所有するヨットの塗装代となっているのか、分かりません」
――金銭の詳細が明らかになっていないのですか。
グルースキン 公的な文書を見たり、様々な人と話したりすることで、全体像をある程度把握することはできましたが、報道機関は資金を得る前提として秘密条項を含む合意をしています。通常は透明性の大切さを主張する報道機関でも、この資金の詳細については話してくれません。
――仕組みを作った、オーストラリア政府も知らないのですか。
グルースキン オーストラリアの仕組みの特徴は、プラットフォームと報道機関に対して、直接の交渉を求めていることです。仮に合意ができなければ、報道機関は政府に対してプラットフォームを指定するよう、申し立てることができます。そうすると、第三者が仲介役としてプラットフォームが払うべき額を決めます。しかも、両者の主張の間を取るのではなく、どちらかが求めている額を正しいと判断することになっています。現段階では、そのような申し立ては起きておりません。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください