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世界から取り残されないために 多様な属性の記者で取材を

政治報道は変わったか(4)

佐藤千矢子 毎日新聞論説委員

 政治報道は変わったのかどうか。政治報道を担ってきた女性記者としての視点も盛り込みながら論考を展開してほしい――。

 こう声をかけていただいたのには二つの理由があると思う。2017年からの2年間、全国紙で女性として初めて政治部長を務めたこと。もう一つは『オッサンの壁』(講談社現代新書)を2022年4月に出版したことだ。自身の政治記者としての体験を振り返りながら、男性優位がデフォルト(あらかじめ設定された標準の状態)となっている日本社会で、働く女性がぶつかる「壁」について書いた。

男女で異なる著書への反応

 恐縮だが、まずはこの拙著への反響の話から始めたい。というのも、男女でかなり反応が異なり、そのことが今回の主題を考えるきっかけになると思うからだ。

拡大筆者の著書『オッサンの壁』(講談社現代新書)

 女性の反応は「同じ経験、あるある」という声が圧倒的だった。本が扱っているのは、主に永田町と政治記者という狭いエリアの話だが、業界を問わず、皆が同じような問題に悩まされていることを再認識した。「オッサンの壁は越えるものではなく、壊すものだ」というメッセージを込めたが、そのことに「勇気づけられた」と言ってくれる人も多い。中には「壊せる!」と書くよう、本にサインを求められたことも何度かあった。

 ちなみに台湾の出版社が翻訳出版を申し出てくれて、現在、準備が進んでいる。ジェンダーと政治をめぐる問題が、やはりグローバルな課題だからだろう。

 一方、男性の反応は複雑だ。好意的な人は「今まで気づかなかったけれども、自分は『ガラスの下駄』をはいていたんだね」と言ってくれる。

 私はタイトルの「オッサン」の定義を、「男性優位に設計された社会で、その居心地の良さに安住し、その陰で、生きづらさを感じている少数派の人たちの気持ちや環境に思いが至らない人」としたのだが、「男性が優遇されているなんておかしい。妻にも聞いてみたが、違うと言っている」という反応もあった。

 政治家の反応は独特だった。自民党のあるベテラン政治家は、本を手にした瞬間「俺にわかるかな」と自信なさげにつぶやいた。自民党内では、比較的リベラルで知られた人だ。中堅の政治家は「身につまされて読んだ」と感想を語ってくれた。その中で、野党の幹部が「政治家のことは自分自身のことだからわかっているが、政治メディアがどうしてあんなに古いまま変わらないのか、あなたの本を読んでよくわかったよ」と声をかけてきた。

 前置きが長くなったが「政治報道は変わったのかどうか」への私の答えは、この野党の政治家とほぼ同じだ。「個別の変化は見られるものの、基本的には変わらない」である。では、なぜ変わらないのか、どうあるべきなのかを、順に考えてみたい。

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筆者

佐藤千矢子

佐藤千矢子(さとう・ちやこ) 毎日新聞論説委員

1987年毎日新聞社に入社。長野支局、政治部、大阪社会部、外信部を経て、2001~05年にワシントン特派員。政治部副部長、編集委員、論説委員を経て、2017年政治部長。大阪本社編集局次長、論説副委員長、東京本社編集編成局総務を経て、2022年4月から現職。著書『オッサンの壁』(講談社現代新書)

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです