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原発「安全研究」は事故リスク解析、米スリーマイル島事故が転機に

奥山 俊宏

拡大阿部清治・元原子力安全・保安院審議官=2016年11月18日、東京都内で
 元原子力安全・保安院審議官の阿部清治(きよはる)(75)は、国による原子力の安全規制に40年余にわたって関わってきた。こんなに長く規制の側に居続けた人はおそらく他にいないだろう。

拡大日本原子力研究所東海研究所=1969年8月19日、茨城県那珂郡東海村村松の上空で朝日新聞社機から
 終戦の翌年の夏、茨城県久慈郡太田町(現・常陸太田市)で生まれた。小学生だったとき、町の南にある東海村の海沿いに日本原子力研究所(原研)が設けられた。最先端技術の結晶である日本初の原子炉に、11歳の阿部は「すごいのができた」と感じ、「パンダが日本に来た」のと同じような好印象を抱いた。

拡大
 中学、高校は水戸市内まで片道1時間半をかけて遠距離通学した。ギリシャ神話や平家物語など古今東西の文学作品を読むのが大好きで、文学部に進もうかと迷ったが、数学と理科の成績がよかったので東京大学理科1類に進んだ。駒場キャンパスにあった寮に入った。そこでマージャンにはまってしまい、教養学部で1年留年。かろうじて工学部の船舶工学科に進んだ。

 ゆくゆくは広島か長崎の造船所に就職するだろうと将来を思い描いていた卒業前年の夏、実家に帰省すると、母親から言われた。

 「そんな遠くに行かなくても近くにも就職先はあるでしょ」

 母親の勧めに従い、翌日、東海村に原研の人事担当を訪ねた。そのまま1970年4月、阿部は原研に就職した。

 東海村ではその4年前から、当時としては日本唯一の商用原発、日本原子力発電株式会社(原電)の東海発電所が原研の北隣で稼働し、その115キロ北の福島県大熊町では東京電力が福島原発1号機、2号機の建設を進めていた。日本における原子力開発は研究から実用化へと進みつつあった。

 原発の安全規制に40年余にわたって関わった原子炉事故研究者、阿部清治(75)の目を通し、日本が原子力にどう向き合ってきたか、その現場を5回の連載でたどる。この原稿は、2021年3月16日の朝日新聞夕刊に掲載された原稿に大幅加筆したその第2回。敬称はすべて略す。
 第1回は「DCHの恐怖、窒素封入配管の開放を進言… 福島原発最悪の夜」。
 第3回は「桁違いに大きい地震の原発事故リスクに『安全目標』未達? 見送られた津波対策」。
 第4回は「原発の安全規制で『戦争』を想定外にしていい理由は? 『我々、福島で痛い目に』」。
 第5回は「『それでも、いつかどこかで原発事故は起きる』 想像力を養い、弱点見抜け」。

拡大日本で初めて原子力発電に成功した日本原子力研究所東海研究所の動力試験炉(JPDR)
 最初に阿部が配属されたのは、福島原発と同じ沸騰水型の試験炉「JPDR」を
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筆者

奥山 俊宏

奥山 俊宏(おくやま・としひろ) 

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部、特別報道部などで記者。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。 「後世に引き継ぐべき著名・重要な訴訟記録が多数廃棄されていた実態とその是正の必要性を明らかにした一連の報道」でPEPジャーナリズム大賞2021特別賞を受賞。 近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に 『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
 ツイッターはhttps://twitter.com/okuyamatoshi
 ご連絡は okuyama-t@protonmail.comに。メールの内容を暗号化する場合はPGPで。パブリックキーのIDは7D2BAD43550EAD96

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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