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銀行子会社・兄弟会社、業務範囲の規制緩和、コロナ禍の銀行法改正で

飯尾 誠太郎

新型コロナウイルス感染症等の影響による社会経済情勢の変化に対応して金融の機能の強化及び安定の確保を図るための銀行法等の一部を改正する法律による銀行法等の改正について


拡大飯尾 誠太郎(いいお・せいたろう)
 2006年、慶應義塾大学法学部卒業。2008年、第一東京弁護士会登録(2016年再登録)。2014~2016年、住商リアルティ・マネジメント株式会社資産運用部出向。
 主な論文・書籍に『ファイナンス法大全(下)[全訂版] 』(共著、商事法務、2017年)、「ISDAマスター契約の関係会社間相殺条項の有効性」(共著、商事法務、2014年)がある。

1. 法律の概要

 本年5月26日付で、「新型コロナウイルス感染症等の影響による社会経済情勢の変化に対応して金融の機能の強化及び安定の確保を図るための銀行法等の一部を改正する法律」(以下「改正法」という。)が公布された。改正法は、本稿で採り上げる銀行法等の改正を含めて、一部を除き、公布の日から起算して6か月を超えない範囲内において政令で定める日からの施行となる。

 改正法は、新型コロナウイルス感染症等の影響による社会経済情勢の変化に対応して金融の機能の強化及び安定の確保を図るため、地域の活性化等に資する業務の金融機関の業務への追加、国内における海外投資家等向けの投資運用業に係る届出制度の創設、預金保険機構が事業の抜本的な見直しを行う金融機関に対して資金を交付する制度の創設等の措置を講ずる必要があることが立法の理由とされている。金融庁より2020年12月22日付で公表された「金融審議会 銀行制度等ワーキング・グループ報告―経済を力強く支える金融機能の確立に向けて―」(以下「銀行制度等WG報告書」という。)において提案されていた内容をベースとして法案化されたものである。

 改正法では、その詳細を政令や内閣府令に委ねている部分も多く、今後政令や内閣府令の改正の動向にも注目する必要がある(本稿脱稿時の2021年5月31日現在、銀行法等の改正に係る政令及び内閣府令の改正案は公表されていない。)。なお、以下では銀行を中心に述べるものとするが、信用金庫、信用協同組合、保険会社などについても、同趣旨の改正がなされている。

2. 銀行法等の改正の背景

 銀行は、ポストコロナの日本経済の回復・再生を支える「要」として、重要な役割を果たすことが求められているため、社会経済において期待される役割を果たそうとする銀行の取組みを後押しする観点などから、業務範囲規制や出資規制などを見直すものとされた。社会経済の構造的な課題として、人口減少や少子高齢化、特に地方の生産年齢人口の減少が挙げられる。また、新型コロナウイルス感染症等による影響として、デジタル化と併せて、地方創生に向けた取組みを加速する必要があり、企業はサービス提供の非対面化・デジタル化や、サプライチェーンの再構築などにも対応しなければならないとされる。さらに、銀行は、資金需要の継続的な減少や低金利環境などによる厳しい経営環境にさらされており、企業部門全体としての資金余剰などを背景に、間接金融部門における緩和的な融資態度が常態化しているとの指摘もなされている。銀行制度等WG報告書においても、銀行は、自らが持続可能なビジネスモデルを構築した上で、日本経済の回復・再生を支える「要」として、①人口減少や少子高齢化に直面する地域の社会経済の課題解決に貢献すること、②ポストコロナに向けて対応を進める企業・産業を力強く支援すること、③「目利き力」をさらに強化し、成長分野に資金を供給することを果たしていくことが期待されるとされている。具体的には、銀行が保有するノウハウや人材、技術などを活用したデジタル化や地方創生など持続可能な社会の構築への貢献、出資を通じた企業の事業再生・事業承継やベンチャービジネスの支援、国際競争力の強化において、その役割を果たすことが期待されている。かような銀行が社会経済において期待される役割を十分に果たすことができるようにするため、銀行法を改正することとなったものである。

3. 業務範囲規制の見直し

(1) 銀行の子会社・兄弟会社に関する改正

 現行法では、銀行は、認可を受けることで、フィンテック企業などの銀行業高度化等会社(情報通信技術その他の技術を活用した当該銀行の営む銀行業の高度化若しくは当該銀行の利用者の利便の向上に資する業務又はこれに資すると見込まれる業務を営む会社)を子会社・兄弟会社にすることができる。改正法では、銀行業高度化等会社に、「地域の活性化、産業の生産性の向上その他の持続可能な社会の構築に資する業務又はこれに資すると見込まれる業務」を営む会社が追加された。これにより、地方創生に関わる会社を銀行業高度化等会社として子会社化することが認められることが明確となった。認可を要することなく子会社とすることが認められる類型として内閣府令で個別列挙されるわけではないため、認可を得ることが条件ではあるものの、銀行の創意工夫次第で子会社を介して幅広い業務を営むことが可能となる。

 また、現行法では、銀行業高度化等会社の認可にあたっては、通常の子会社・兄弟会社の保有に係る認可基準に加えて、①出資が全額毀損した場合でも銀行等の財産・損益が良好であると見込まれること、②優越的地位の濫用の著しいおそれがないこと、③利益相反取引の著しいおそれがないことを確認することが必要とされている。この点、銀行制度等WG報告書においては、銀行業高度化等会社が現に営んでいる業務や今後営み得る業務のうち、銀行・銀行グループ以外の担い手が充分に存在しないことなどにより、社会経済において、銀行・銀行グループが営むことへの期待が高いと考えられる業務や金融業務との関連性から、銀行・銀行グループが営むことが社会的にも合理的であると認められる業務であって、これまでの業務の実施状況等に鑑みて他業リスクや優越的地位の濫用、利益相反取引の著しいおそれがあるとは認められない業務については、かかる認可基準を緩和することが提言されていた。それを受けて、改正法において、銀行業高度化等会社に関して、一定の業態を内閣府令で個別列挙することにより、通常の子会社・兄弟会社と同様の認可基準で足りることとする規制緩和が見込まれている。現時点においては、以下のものが内閣府令で個別列挙されることが見込まれている。さらに、これらの業態について、財務健全性・ガバナンスが一定以上であることの認定を受けた銀行持株会社のグループにおいて、銀行の兄弟会社が営む場合は、認可を不要とし、届出で足りるものとされた。

 ① フィンテック
 ② 地域商社(在庫保有、製造・加工を原則行わないもの)
 ③ 自行アプリやITシステムの販売
 ④ データ分析・マーケティング・広告
 ⑤ 登録型人材派遣
 ⑥ ATM保守点検
 ⑦ 障害者雇用促進法上に係る特例子会社
 ⑧ 地域と連携した成年後見

 また、銀行・銀行グループのバックオフィス業務にあたる従属業務は、それ自体は「他業」であるため、銀行グループが無制限に営むことは適切でないと考えられることから、収入依存度規制(①親銀行グループのみに業務を提供する場合、グループからの収入が総収入の50%(ATM保守点検業務などは40%)以上であり、かつ、親銀行からの収入があること、②複数の銀行グループに業務を提供する場合、それらのグループからの合計収入が総収入の90%以上であり、かつ、各グループの銀行本体からの収入があること。)により、従属業務が銀行・銀行グループのために営まれていることを確認してきた。従属業務に含まれる業務の中には、グループ外にも提供されることで、提供先企業の生産性向上などを通じ地域の活性化に資するものがあると考えられるものの、収入依存度規制がこうしたグループ外への柔軟な提供を阻害しているとの指摘が、銀行制度等WG報告書においてなされた。これを踏まえ、改正法においては、収入依存度規制に係る法令上の数値基準が撤廃され、「銀行等のためにその業務を営んでいること」のみが、従属業務会社の要件となる。但し、必要に応じてガイドライン等において、法令上の数値基準に代わる「目安」が設定される可能性が示唆されている。

(2) 銀行本体及び銀行持株会社の業務に関する改正

 銀行本体は預金を直接受け入れることなどから、従来、その業務範囲は子会社・兄弟会社と比較して制限されてきた。もっとも、銀行業に係る人材や技術などの経営資源を直接保有しており、子会社・兄弟会社と比較して銀行利用者のニーズに沿った機動的な業務展開が可能であることを踏まえ、銀行業に係る経営資源の有効活用にあたる範囲内において、銀行本体がデジタル化や地方創生など持続可能な社会の構築に資する業務を営むことができるようにすることが、銀行制度等WG報告書において提言された。これを踏まえ、改正法においては、銀行本体の業務に、「銀行の保有する人材、情報通信技術、設備その他の当該銀行の営む銀行業に係る経営資源を主として活用して営む業務であって、地域の活性化、産業の生産性の向上その他の持続可能な社会の構築に資する業務として内閣府令で定めるもの」が追加された。具体的な業務内容は内閣府令において個別列挙されることとなるが、当該業務の追加により、より機動的な業務体制の構築が期待されている。

 また、銀行持株会社は、従来、当該銀行持株会社のグループに属する二以上の会社に共通する業務であって、当該業務を当該銀行持株会社において行うことがグループの業務の一体的かつ効率的な運営に資するものとして内閣府令で定めるものについて、認可を受けることでその業務を行うことができるとされていたが、改正法において、「内閣府令で定める軽易な業務」については、認可を不要とし、届出で足りることとされた。この点も具体的な業務内容は内閣府令で定められることとなるが、銀行制度等WG報告書においては、福利厚生に関する業務や事務用物品の購入・管理業務が届出により営むことが認められる業務の例として挙げられている。

4. 出資規制、外国子会社・外国兄弟会社の業務範囲の見直し

(1) 出資規制に関する改正

 現行法では、投資専門会社(資金の貸付け、社債の取得等により事業に必要な資金を供給する業務を専ら営む会社をいう。)を通じたベンチャー会社や事業再生会社などへの出資については、相応の政策的合理性が認められるものとして議決権取得等制限(いわゆる5%ルール)の例外とされている。この点、銀行制度等WG報告書において、ポストコロナにおいて銀行・銀行グループは、その「目利き力」やコンサルティング能力を強化し、ビジネスモデルの転換支援を含めた企業支援に一層積極的に取り組むことが求められ、また、銀行・銀行グループが、こうした求めに適切に対応できるよう、引き続き投資専門会社経由での出資を基本とし、個別性が高く資金調達が容易でない非上場の会社に関して、議決権取得等制限の例外を拡充することが提言された。

 これを踏まえ、投資専門会社のハンズオン支援能力を強化するため、現行法では「出融資とそれに附帯する業務」に限定されている投資専門会社の業務に、内閣府令において、コンサルティング業務等を追加することが見込まれている。なお、銀行制度等WG報告書においては、投資専門会社がコンサルティング業務をも営むようになると、出融資先企業による投資専門会社への依存が高まり、事業再生の局面などにおいて優越的地位の濫用や利益相反取引のおそれが高まるとの指摘があるため、銀行・銀行グループはこうした懸念に留意し、投資専門会社において顧客利益を保護するための体制を適切に整備することが求められると指摘している。

 また、現行法では、投資専門会社による投資を経由しても「子法人等」に該当しない範囲(=最大で50%)までしか保有できなかった地域活性化事業会社(地域の活性化に資すると認められる事業を行う会社として内閣府令で定める会社)が子会社対象会社に追加された。その具体的な内容は内閣府令に委ねられることとなるが、内閣府令において列挙される事業活動を行う会社について子法人等とする場合には、認可によることなく届出で足りることとなり、また、当該会社が非上場の場合には100%の出資が可能となることが見込まれている。

(2) 外国子会社・外国兄弟会社の業務範囲規制に関する改正

 現行法では、銀行・銀行グループが買収した外国銀行などが保有する外国子会社については、当該会社について業務範囲規制に抵触する場合、買収後5年間以内に売却することが「原則」とされている。銀行業を営む外国の会社が行う業務については、バーゼルコンコルダット(「銀行の海外拠点監督上の原則」1975年バーゼル委員会(1983年改訂))の趣旨にかんがみ、現地監督当局が容認するものは、銀行法の趣旨を逸脱しない限り原則として容認するとされているが(主要行等向けの総合的な監督指針V-3-3-5(1)(注)参照)、あくまでも「銀行業を営む外国の会社」に限定されており、「銀行業を営む外国の会社」の子会社等の業務についてまでは容認するものとはされていない。また、一般事業を兼営する外国のリース会社や外国の貸金業者については、買収自体が認められていない。このような状況に対して、銀行制度等WG報告書においては、外国業務に経営資源を投じ、「海外で稼ぐ力」の強化を目指す銀行・銀行グループも存在し、適切なガバナンスやリスク管理の下で営まれる外国業務は、他の先進国や新興市場国・開発途上国の成長の果実を還流するという点において日本国内に利益をもたらすものとも言えると指摘した。そして、銀行・銀行グループによる外国銀行や外国のリース会社などの機動的な買収を阻害しないようにする観点と、これまで現地において一体として付加価値を創造してきた外国会社・外国会社グループを不合理なかたちで分離・解体することを強いることがないようにする観点から、規制の見直しを行うことが提言された。

 これを踏まえ、改正法では、銀行が買収した外国子会社・外国兄弟会社について、現地における競争上の必要性があれば、業務範囲規制にかかわらず、継続的に保有することができることとされた。具体的には、銀行又は銀行持株会社は、次のいずれかに該当する場合には、その子会社に係る業務範囲規制にかかわらず、子会社対象会社以外の外国の会社が子会社となった日から10年を経過する日までの間、当該子会社対象会社以外の外国の会社を子会社とすることができることとなる。

  1.  現に子会社対象会社以外の外国の会社を子会社としている子会社対象外国会社等を子会社とすることにより、子会社対象会社以外の外国の会社を子会社とする場合
  2.  外国特定金融関連業務会社(金融関連業務のうち一定のものを主として営む子会社対象会社以外の外国の会社)を子会社とする場合

 また、銀行又は銀行持株会社は、次のいずれかに該当する場合に内閣総理大臣の承認を受けたときは、その子会社に係る業務範囲規制にかかわらず、上記に定める10年の期間を超えて当該承認に係る子会社対

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筆者

飯尾 誠太郎

飯尾 誠太郎(いいお・せいたろう) 

 2006年、慶應義塾大学法学部卒業。2008年、第一東京弁護士会登録(2016年再登録)。2014~2016年、住商リアルティ・マネジメント株式会社資産運用部出向。
 主な論文・書籍に『ファイナンス法大全(下)[全訂版] 』(共著、商事法務、2017年)、「ISDAマスター契約の関係会社間相殺条項の有効性」(共著、商事法務、2014年)がある。

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