2021年07月20日
東京五輪組織委員会の事務総長を務める武藤敏郎氏にとっておそらく人生最大の失態だったのは、1998年に刑事事件となった大蔵省の接待汚職への対応だ。同省の官房長として疑惑を内部調査して責任を明確にすべき立場にあったが、「全体を調査したが、違法な事実はなかった」として、疑惑にふたをしようとした。実際にはきちんとした調査をしておらず、98年1月26日には部下職員2人を逮捕され、自身も辞意を首相に伝えざるをえなくなった。あれから23年あまりがたつ。危機管理能力に疑問符をつけられた経験を教訓にできているのだろうか。
調査を約束しない蔵相をさらに追及したところ、そこに割って入るように登場したのが大蔵大臣官房長の武藤氏だった。接待疑惑について武藤氏は「一昨年の12月に大蔵省は倫理規程を出しましたが、それ以後におきましては、私どもはない、これは調査した結果ないと思っております」と明言。これを補うように三塚蔵相も「全体を調べた結果をいま官房長が言った」「職員につき聞き取りをした結果、違法な事実はありませんでした」と述べた。
しかし、実のところ、きちんとした調査などしていなかった。この時点で、職員から聞き取り調査をしていたのは第一勧業銀行、大和銀行の検査時などごく一部のケースだけ。銀行局や証券局の総務課長、金融検査部の管理課長に対して倫理規程の順守状況を問い合わせることはあったものの、網羅的な調査はしていなかった。武藤氏の答弁にある「一昨年の12月」、すなわち96年12月以降も、金融機関による大蔵省職員への接待が続いていたことは省内や金融業界の多くの人が知る公然の秘密だった。
そもそもその前年の夏
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