経営者の本音や意気込みも
2021年09月28日
東京証券取引所に株式を上場する企業のうち時価総額や流動性が高い大型株の100社を対象に、各社のホームページを8月下旬に筆者が調べたところ、60社が株主総会に関する動画をアップしており、このうち23社が株主総会の総会審議の全容が分かるような形で動画を流していた。長らく、リアルに出席した人しか株主総会の様子を見聞きすることができなかったが、コロナ禍で2回目となる今年6月の株主総会については、ネット技術の進展と、株主との対話を推し進めようとする機運の高まりもあって、総会の様子をいつでもだれでも見られるようにしているようだ。画面から、経営陣の意気込みと本音が垣間見え、厳しい経営環境を知ることができる。
動画を公開している60社のうち、37社においては、その年の経営環境やトピックス、業績などの事業報告や議案の説明にとどまり、株主と経営陣の質疑応答は見られなかった。残りの23社は、株主と経営陣の質疑応答を含めてほぼ総会の全体を掲載していた。株主の質問の内容については、音声で流す社もあれば、箇条書きにしてテロップで画面に挿入する社もあった。
以下、株主との質疑応答を中心に、筆者にとって興味深かった動画を紹介したい。
採用計画に関する質問が出た。これには取締役をかねる直木敬陽執行役員が説明。2021年度は当初、3200人の採用を予定していたが、コロナ禍で一部を除いて昨年5月に採用活動を中断したことを明らかにした。2022年度も一部の職種を除いて採用を見送る予定という。動画には片野坂真哉社長も登場し、国際線の旅客数は2020年度、コロナ前の4~5%の水準(減少幅が96~95%)となった一方、国際線貨物は過去最高の収入だったことを強調。「今年度末に国内線でコロナ前の水準に戻り、国際線で5割まで回復する」との見通しを示した。「今回の危機を乗り越え、パンデミックの再来にも耐えうる強靱な企業グループに生まれ変わる」と片野坂社長の力強い言葉が印象的だった。
https://www.ana.co.jp/group/investors/irdata/shareholders/
別の株主から「ケミカル部門の収益性が低い。正常化するにはどうするのか」との質問が出た。ケミカル部門は汎用品が多く、アジア諸国との競争が厳しい半面、高度な環境技術で優位性を保てる可能性もある。これにはギルソン社長が通訳付きの英語で回答。事業の概要を解説しながら、「石油化学事業は複雑な面があり、将来について厳しく自問自答をしていかなければ」などと多角的に検討する姿勢をアピールした。
https://www.mitsubishichem-hd.co.jp/ir/stock_info/stock_meeting.html
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