メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

動画でみる株主総会 大企業の2割がほぼ全容を配信中

経営者の本音や意気込みも

加藤 裕則

 東京証券取引所に株式を上場する企業のうち時価総額や流動性が高い大型株の100社を対象に、各社のホームページを8月下旬に筆者が調べたところ、60社が株主総会に関する動画をアップしており、このうち23社が株主総会の総会審議の全容が分かるような形で動画を流していた。長らく、リアルに出席した人しか株主総会の様子を見聞きすることができなかったが、コロナ禍で2回目となる今年6月の株主総会については、ネット技術の進展と、株主との対話を推し進めようとする機運の高まりもあって、総会の様子をいつでもだれでも見られるようにしているようだ。画面から、経営陣の意気込みと本音が垣間見え、厳しい経営環境を知ることができる。

拡大日産自動車の株主総会=同社提供
 100社のサイトを見ると、計60社が総会に関する動画をアップしていたのに対し、36社は動画を載せていなかった。残りの4社については、動画の案内はあったが、株主専用だったり、期限が来て公開が終了したりしていた。

 動画を公開している60社のうち、37社においては、その年の経営環境やトピックス、業績などの事業報告や議案の説明にとどまり、株主と経営陣の質疑応答は見られなかった。残りの23社は、株主と経営陣の質疑応答を含めてほぼ総会の全体を掲載していた。株主の質問の内容については、音声で流す社もあれば、箇条書きにしてテロップで画面に挿入する社もあった。

 以下、株主との質疑応答を中心に、筆者にとって興味深かった動画を紹介したい。

苦境の航空業界は

拡大ANAの片野坂真哉社長
 コロナ禍でもっとも影響を受けたのが航空業界だ。6月29日に開かれたANAホールディングスの株主総会の動画を見た。株主と経営陣との質疑応答では、質問の概要を画面下にテロップのように「Q:役員報酬について」などと表示していた。答弁する取締役が登壇すると、画面の右下に肩書と氏名を入れた。

 採用計画に関する質問が出た。これには取締役をかねる直木敬陽執行役員が説明。2021年度は当初、3200人の採用を予定していたが、コロナ禍で一部を除いて昨年5月に採用活動を中断したことを明らかにした。2022年度も一部の職種を除いて採用を見送る予定という。動画には片野坂真哉社長も登場し、国際線の旅客数は2020年度、コロナ前の4~5%の水準(減少幅が96~95%)となった一方、国際線貨物は過去最高の収入だったことを強調。「今年度末に国内線でコロナ前の水準に戻り、国際線で5割まで回復する」との見通しを示した。「今回の危機を乗り越え、パンデミックの再来にも耐えうる強靱な企業グループに生まれ変わる」と片野坂社長の力強い言葉が印象的だった。

 https://www.ana.co.jp/group/investors/irdata/shareholders/

試される経営者

拡大三菱ケミカルホールディングスのジョンマーク・ギルソン社長
 4月1日付で社長に就任した三菱ケミカルホールディングスのジョンマーク・ギルソン取締役はベルギー出身だ。6月24日の株主総会で、「なぜ外国人なのか」との質問が株主から出た。同社はホームページ上の動画で株主の質問の声も出しており、「ギルソン氏がどうこう言うつもりはないが」と言い添える言葉も聞き取れて、臨場感がある。これには指名委員会委員長で社外取締役の橋本孝之・元日本IBM社長が回答した。指名委員会の役割について「社内の環境、社外の環境、それを見て最もふさわしいリーダーを選ぶこと。これは日本人であれ、(外国人であれ)、社内であれ、社外であれ…」などと説明し、あらゆる機会を捉えて最もふさわしいリーダーを選んだことを強調。最終的に7人の中から選んだとも付け加えた。その前提として、同社が持ち株会社になって15年が経過し、「いろんな会社が集まって一つの形をつくってきた。だが、過去の延長に未来はなく、次のステップにいかなければ」とこれまでとは違った経営感覚を持った人物を求めたことを示唆した。

 別の株主から「ケミカル部門の収益性が低い。正常化するにはどうするのか」との質問が出た。ケミカル部門は汎用品が多く、アジア諸国との競争が厳しい半面、高度な環境技術で優位性を保てる可能性もある。これにはギルソン社長が通訳付きの英語で回答。事業の概要を解説しながら、「石油化学事業は複雑な面があり、将来について厳しく自問自答をしていかなければ」などと多角的に検討する姿勢をアピールした。

 https://www.mitsubishichem-hd.co.jp/ir/stock_info/stock_meeting.html

ワクチン開発の現状は

拡大塩野義製薬の株主総会
 新型コロナウイルスに対するワクチン製造の現状を知ることもできる。6月22日に開かれた塩野義製薬の株主総会では、ワクチンに関する質問が出た。世界的に見て、ワクチンの実用化の面では、米国のファイザーや英国のアストラゼネカなど欧米勢が先行し、日本国内の製薬メーカーはいまも開発中で劣勢を強いられている。この状況に手代木功社長は「国内のメーカーを代表して、返す言葉もない」と低姿勢だった。欧米企業の開発のスピードや、許認可権を握る各国の柔軟性について「日々、驚くことばかり」と言った。一方で、塩野義製薬も安全性や使い勝手
・・・ログインして読む
(残り:約3574文字/本文:約5717文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

加藤 裕則

加藤 裕則(かとう・ひろのり) 

 1965年10月、秋田県生まれ。岩手大人文社会科学部卒業。89年4月に朝日新聞社入社。静岡支局や浦和支局(現さいたま総局)などに赴任した後、99年東京本社経済部員。その後、名古屋本社経済部員、青森総局次長、大阪本社経済部員。2011年4月から14年9月まで2度目の東京本社経済部員で、金融情報面(株式面)や社会保障取材班を担当した。2020年4月から静岡総局次長。
 経済記者としては、これまで通産省(現・経産省)、鉄鋼業界、トヨタ自動車(名古屋)、関西空港などを取材してきた。通産省クラブ時代から、コーポレート・ガバナンスや会計監査について自主的に取材を重ね、朝日新聞のオピニオン面に掲載される記者有論などで論じてきた。2014年9月から石巻支局員として東日本大震災からの復興の過程を取材。2018年4月から東京本社の経済部員として財界などを取材している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

加藤 裕則の記事

もっと見る