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対面ヒアリングの重要性をコロナ禍に再認識

調査案件を扱う弁護士の立場から

大西 良平

1 コロナ禍における調査案件の実情

 2020年から始まった新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、働き方や生活に大きな影響を与えた。

 業種や業務内容にもよるが、「テレワーク」という働き方が広がっており、当事務所においても、弁護士及びスタッフの「テレワーク」が導入されている。

 また、従前は会議というと対面が当たり前であったが、事務所内部の会議だけでなく、クライアントとの会議についても、基本的にはWEB会議を利用するようになった。

 筆者は元検察官検事であり、当事務所内では企業不祥事等の調査案件を多く取り扱っている。この種の調査案件では、事実関係等を確認するために関係者のヒアリングを実施するが、会議だけでなくヒアリングについても、WEB会議によって実施する機会が増えた。コロナ禍以前は、調査案件のヒアリングは対面での実施が基本であったと思われる。

 今回は、調査案件において、WEB会議によりヒアリングを実施する機会が増えたことから、筆者において感じたことを述べていきたい。

 なお、本稿中、意見にわたる部分は、もとより私見である。

2 WEB会議の便利さ

 WEB会議というのは非常に便利である。

 会議参加者が、特定の場所に物理的に移動して集まる必要はないので、往復の移動時間や移動の労力等が不要となった。本来は宿泊が必要になる遠隔地でも、WEB会議であれば、宿泊も不要となる。

 また、空いている会議室を探したり、会議当日にお茶等を並べたり、資料を人数分印刷したりするなどの準備も必要ない。

 空間に物理的な制約がないため、大人数の参加も容易であるし、ランチタイム勉強会も、WEB会議により開催される場合には、本当の意味で、気軽にランチをとりながら参加できるようになった。

 WEB会議が一気に広まった背景には、高速通信が可能なインターネット環境の整備が進んでいたこともあると思うが、本当に便利になったと感じる。

3 対面の重要性を再認識

 このようにWEB会議は非常に便利であるが、調査案件を扱う筆者においては、WEB会議によるヒアリングを多数回実施したことにより、対面の重要性を再認識した。

 調査案件のヒアリングでは、関係者から事実関係等を聴取することが必要であるが、対面と比べた場合、WEB会議には一定の制約がある。

 WEB会議では画面に映るのは基本的に顔部分だけであるため、例えば、手や足が震えていても分からず、ヒアリング対象者の供述状況の判断には制約がある。また、ヒアリング対象者が視線を画面から外した先に何があるのかも分からない。

 そして、画質の問題から表情の変化等の機微が必ずしも伝わってくるわけではないし、隔地者間の通信である以上、多少のタイムラグが発生するので、間髪入れずに質問することはできない。

 加えて、ヒアリング対象者が事実関係等をどの程度話すかについては、当該事項についてどのような利害関係があるのかはもちろん、ヒアリング実施者への信頼も少なからず影響するところ、筆者においては、対面よりもWEB会議のほうが信頼は得られにくいと感じている。なお、ここでいう「信頼」というのは、大げさな意味ではなく、「この人に話しても良いか」程度の意味でご理解いただきたい。

 ただでさえ初対面での信頼形成は難しいところ、その上、画面越しで、ヒアリング実施者がどのような人物かもよく分からない状況では、最初から全てを話すのではなく、まずは様子を見るという判断になっても何ら不思議ではない。

 筆者が前職で検察官検事であった際は、対面でヒアリングをするのが普通であり、その感覚もあるのかもしれないが、上記のとおり、WEB会議によるヒアリングには一定の制約があると感じており、対面の重要性を再認識する機会となった。

 なお、WEB会議によるヒアリング実施だけでなく、電話によるヒアリング実施も相当数経験しているが、音声しかない電話でヒアリングを実施するのはWEB会議以上の制約がある。

4 状況に応じたWEB会議との使い分けが必要

 対面の重要性を再認識したと述べたものの、筆者においては、コロナ禍の状況で全てのヒアリングを対面で実施すべきと考えているわけではない。

 前述したとおり、WEB会議は、場所的移動が必要ないため、時間等の面では優れている。急遽、補充でヒアリングを実施したいという場合でも、対面と比べると比較的設定も容易である。

 また、コロナ禍においては、感染拡大防止という観点も非常に重要であるから、感染状況等も考慮する必要がある。

 そのため、WEB会議の利便性も踏まえると、コロナ禍において、対面で実施するのか、WEB会議で実施するのかについては、状況に応じた使い分けが必要だと考えている。

 例えば、ヒアリング対象者が、当該調査案件において核となる人物であれば、対面で実施する必要性が高くなるであろうし、一方、短時間で簡単な事項を確認する程度であればWEB会議で十分という方向に傾くであろう。初回は対面で実施して、互いの人となり等を把握した上で、2回目以降はWEB会議で実施するという場合もある。

 このように、ヒアリング対象者の重要度や、位置付け、聴取事項、移動時間の長さ及び宿泊の要否、新型コロナウイルスの感染状況、緊急事態宣言の発出有無等を総合的に考慮して、対面で実施するのか、WEB会議で実施するのかについて適切に判断する必要がある。

 重要度や状況に応じた使い分けというのは、ヒアリングに限った話ではなく、重要な交渉や会議等でも同様と思われる。

5 終わりに

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 以上のとおり、コロナ禍において、調査案件のヒアリングをWEB会議により実施する機会が増え、対面の重要性を再認識した。

 WEB会議によるヒアリングが広く実施されることになったが、仮に、今後、コロナ禍が終息した場合でも、その利便性から、WEB会議によるヒアリングは調査手法として定着し続けることになると思われる。

 コロナ禍終息後も状況に応じた使い分けが必要という点に変わりはないが、企業不祥事等の調査案件という性質に鑑みた場合には、可能であればヒアリングは対面で実施することが望ましいのではないだろうか。

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筆者

大西 良平

大西 良平(おおにし・りょうへい) 

 アンダーソン・毛利・友常法律事務所弁護士。
 2007年、京都大学法学部卒業。2009年、京都大学法科大学院(法務博士(専門職))修了。2010年、司法修習(63期)を経て東京地検検事。2011年、大阪地検検事。2012年、水戸地検検事。2014年、東京地検検事。2015年、横浜地検検事。2016年、「判事補及び検事の弁護士職務経験制度」に基づき森・濱田松本法律事務所勤務。2018年、岡山地検検事。2019年、東京地検検事。2020年、アンダーソン・毛利・友常法律事務所入所。
 主な著書・論文に『基礎からわかる 広告・マーケティングの法律』(中央経済社、2020年)などがある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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