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改正再エネ特措法の再確認 太陽光発電への規制最新動向

森 宣昭

拡大森 宣昭(もり・のぶあき)
 2005年、東京都立大学法学部卒。2007年、東京大学法科大学院修了(J.D.)。司法修習(61期)を経て2008年、第二東京弁護士会登録。2016年、Boston University School of Law修了(LL.M.)。2016~2018年、Marubeni Middle-East & Africa Power Limited (ドバイ)出向。2018年、ニューヨーク州弁護士登録。2022年1月、西村あさひ法律事務所パートナー就任。

1 はじめに

 令和2年6月12日に公布された、「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第49号。以下「強靱化法」という。)3条による、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(平成23年法律第108号。以下「再エネ特措法」という。)の一部改正が、令和4年4月1日からついに施行された。今回の改正は、認定失効制度や解体等積立金制度等、既存の再エネ施設のプロジェクトにも影響のある内容が含まれており、強靭化法の公布以降、実務上も大いに注目されてきたところである。施行日を迎えるにあたって、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則」(平成24年経済産業省令第46号。以下「施行規則」という。)の新たな改正や関連する各種告示も公布されており、本稿では、それらの情報も踏まえ、再エネ特措法改正の全体像について確認することとしたい。なお、以下で法令名を記載せずに条文番号を記載する場合は、再エネ特措法の条文を指すものとする。

2 再エネ特措法の改正

(1) 法令名の改正

 実務上大きな影響があるものではないが、法律の名称が「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」から「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」に改正された。再エネ特措法を受けた政令である「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行令」(平成23年政令第362号)及び施行規則の名称についても同様である。施行日以降に作成する書面で言及する際は改正後の名称で記載することになろう。

(2) 広域的運営推進機関

 電気事業法(昭和39年法律第170号)28条の4に規定される広域的運営推進機関として、平成27年4月1日に設立された電力広域的運営推進機関(以下「推進機関」という。)が、再エネ特措法上の様々な業務を実施することとされている。具体的には、①納付金の徴収業務(31条1項、38条1項)、②FIT制度(固定価格買取制度)の調整交付金の交付業務(15条の2第1項)、③FIP制度(供給した電気量に応じて一定のプレミアム(補助額)を給付する制度。詳細は後述する。)の供給促進交付金の交付業務(2条の2第3項)、④系統設置交付金の交付業務(28条2項)、⑤FIT制度及びFIP制度の入札業務(7条10項)、⑥解体等積立金の管理業務(15条の13)が挙げられる。これらの業務に関し、推進機関は、再エネ特措法に基づき、徴収等業務規程(40条1項)、入札業務規程(8条の2第1項)及び積立金管理業務規程(15条の14第1項)を定めており、推進機関のウェブサイトで公開されている。上記③、④及び⑥については強靭化法による改正で導入された制度に関する業務であり、これらの制度については後述する。

(3) 電気事業者の定義の改正

 細かな点ではあるが、強靱化法による電気事業法の改正により新たに規制対象となる事業の類型として「配電事業」(電気事業法2条1項11号の2)が追加されたことに伴い、再エネ特措法上の電気事業者の定義に「配電事業者」が追加されている(2条4項)。

(4) FIP(Feed-in Premium)制度

 FIT(Feed-in Tariff)制度は、固定価格による買取保証やインバランスリスクの免除により、再エネ電源の導入拡大に大きく寄与してきたが、更なる導入に向けて再エネ電源の自立化を促進する観点から、次の段階として市場連動型のFIP制度が創設された。FIP制度においては買取保証はなく、事業者は卸電力取引市場や相対取引で自ら売電して売電収入を得ることになるが、これに加えて一定のプレミアム(再エネ特措法上は「供給促進交付金」と定義される。)を受け取ることができる。なお、前述の通り、プレミアムの交付業務は推進機関が行う。FIT制度と異なり、事業者の収入は市場価格と連動することとなるため、市場を意識した行動が期待されることとなる。

 FIP制度についても、FIT制度と同様、経済産業大臣による再生可能エネルギー発電事業計画の認定を受ける必要がある(9条1項)。FIP制度の対象は「交付対象区分等」と定義され(2条の2第1項)、告示(注1)により主に50キロワット以上の再エネ電源が指定されている。他方、FIT制度の対象は「特定調達対象区分等」と定義され(3条1項)、告示(注2)により指定されている。現状、「交付対象区分等」と「特定調達対象区分等」が重なる区分が存在しているが、当該区分については事業者がいずれかを選択して申請可能とされている。なお、既にFIT制度の認定を受けている場合でもFIP制度に移行することができるが、混乱を回避する観点から、売電の方法が決定していること等、個別の認定基準が設けられている(施行規則5条1項8号の3ハ(1)乃至(3))。

 FIT制度における調達価格と調達期間と同様に、FIP制度においては基準価格と交付期間が告示(注3)により定められる(2条の3第1項)(注4)。プレミアムの金額は、基準価格から市場価格等に基づき算定された価格を控除した額(「供給促進交付金単価」)に、供給した電気の量を乗じた額を基礎として1ヶ月毎に算定される(2条の4)(注5)。なお、供給促進交付金単価は零を下回らないこととされており(2条の4第2項)、プレミアムがマイナスになることは想定されていない。資源エネルギー庁のウェブサイトでは、FIP制度における収入の簡易シミュレーションツールが公開されており参考になる。

 FIP制度の下では事業者は自ら市場取引等により売電を行うため、事業者の責めに帰することができない事由により売電に支障が生じた場合、一時的に電気事業者に対して売電の申込ができる一時調達契約の制度が設けられている(2条の7、16条2項)。本制度は、発電設備の設置場所が沖縄県又は離島等(注6)以外に属し、出力が1,000キロワット以上かつ当該認定事業者の純資産の額が1,000万円以上である場合には利用できない(施行規則3条の6)。一時調達契約の売電価格は基準価格の8割に消費税及び地方消費税相当額を加えた額(施行規則3条の8)、売電期間は供給開始日から12ヶ月間とされ(施行規則3条の7)、当該期間中に新たに売電が可能となった場合は事業者側から一時調達契約を解除できる(2条の7第2項)。

(5) 解体等積立金制度

 太陽光発電事業は様々な事業者が参入し事業主体の変更も多い上、太陽光パネルには有害物質を含有するものもあることから、事業終了後に発電設備が適切に廃棄されない懸念がある。そのため、事業計画策定ガイドラインにより撤去費用積立の義務化が行われたが、積立の水準や時期は事業者に委ねられており適時の資金確保に懸念が残ったため、法令に基づく積立制度が創設されることとなった。本制度の対象は「積立対象区分等」と定義され(15条の6第1項)、告示(注7)により主に10キロワット以上の太陽光発電設備が指定されている。なお、本制度に基づく積立義務違反は新たに認定取消事由として追加されている(15条4号)。

 積立は原則として源泉徴収的に行われ、前述の通り推進機関によってなされる(以下「外部積立」という。)。すなわち、FIT制度の対象であれば、積立金と特定契約に基づく売電代金が相殺され、電気事業者を経由する形(電気事業者は推進機関との間で当該積立金と調整交付金とを相殺する。)で、FIP制度の対象であれば、積立金と供給促進交付金とを相殺する形で、それぞれ推進機関の下に積立がなされる仕組みとなっている。外部積立の積立期間は、原則として調達期間又は交付期間の終了前10年間とされ(施行規則13条の4)、積立金額は、価格等告示で規定される「解体等積立基準額」に供給した電気の量を乗じた額とされている(15条の7第1項)。

 以上の原則的な外部積立に対し、一定の要件を満たし、再生可能エネルギー発電事業計画の認定を受けた場合には、例外的に、外部積立を行わず自ら積立を行うことが認められている(以下「内部積立」という。)。内部積立された金銭は、外部積立された金銭については解体等の実施に要する費用に充てる場合等に限り取戻しが認められるのと異なり、修繕等により一時的に(注8)使用することが認められている。改正により、再生可能エネルギー発電事業計画に、解体等に要する費用に充てるために積み立てる金額、積立方法等を記載することができることとされており(9条3項)、認定取得済であっても当該記載を追加する認定を受けることが可能である(10条1項)。内部積立が認められるための具体的な要件は、施行規則及び廃棄等費用積立ガイドライン(注9)にて規定されており、内部積立を希望する場合は当該要件を充足するための対応が必要となる。要件の例を挙げると、積立時期や積立金額は外部積立と同水準以上が要求されており、毎年積立金額の公表も要求される。また、内部積立の要件が満たされなくなった場合は、外部積立に移行し、それまでに積み立てた内部積立金も推進機関に積み立てることとされている。

(6) 認定失効制度

 認定を取得したまま長期間運転が開始されない、いわゆる未稼働案件は、国民負担の増大や系統容量の圧迫といった問題があるため、これまでも失効措置を含めて対策が講じられてきたところであるが、改めて全再エネ電源を対象として、運転開始に向けた進捗が確認できない案件の認定を失効させる制度が創設された(14条2号)。

 本制度においては、電源毎に定められる運転開始期限日(注10)の1年後の日を基準日として、運転開始されない場合には以下のルールが適用される(注11)(施行規則13条の2)。

  1.  基準日までに系統連系工事着工申込書(注12)が一般送配電事業者等により受領されていない場合は、基準日にて失効となる。
  2.  基準日までに系統連系工事着工申込書が一般送配電事業者等により受領されている場合は、運転開始期限日に、認定から運転開始期限日までの期間(注13)を加えた期間まで失効期間が延長される。
  3.  基準日までに系統連系工事着工申込書が一般送配電事業者等により受領され、かつ電気事業法に基づく工事計画の届出が不備なく受領されたこと又は環境影響評価に係る準備書に対する勧告がなされたこと等を経済産業大臣が確認した場合は、運転開始期限日に、調達期間に当たる年数を加えた期間まで失効期間が延長され、実質的に失効リスクが解消される。なお、経済産業大臣の確認を得るためには、予め進捗確認申請書(施行規則様式7の2(注14))による手続が必要となる(施行規則13条の2第2項)。

 上記については経過措置があり、令和4年4月1日時点で運転開始期限日が経過している太陽光発電設備や平成30年3月31日までに認定を受けた太陽光以外の発電設備については電源毎に定められた措置が適用される(施行規則附則2条、3条)。例えば、太陽光発電設備については、原則として、令和5年3月31日を基準日として上記と同様の取扱いがなされ、上記①の場合は基準日にて失効となり、上記②の場合は令和7年3月31日まで失効期間が延長され、上記③の場合は令和24年3月31日まで失効期間が延長される。

(7) 系統設置交付金制度

 再エネ電源の導入により必要となる送変電設備の増強を促進し、また、地域間での送変電設備の増強に係る負担格差を解消する観点から、推進機関から当該送変電設備の工事・運転維持を行う一般送配電事業者又は送電事業者に対して、系統設置交付金として資金を交付する制度が導入された(28条1項)。再エネ特措法上の賦課金の仕組みを利用し、主に小売電気事業者等が推進機関に納付する納付金が系統設置交付金の原資となる(29条2項)。系統設置交付金の金額は、一般送配電事業者又は送電事業者が届け出た系統電気工作物の設置及び維持に要する費用の額に、再エネ電気の利用の促進が占める割合(注15)を乗じて算定した額とされ、当該設備の耐用年数にわたって年度毎に交付される。なお、強靭化法による改正後の電気事業法では、広域系統整備計画に基づく計画的な系統整備が想定されている。

3 施行規則の改正

(1) 地域活用要件

 再エネ電源の地域での活用を促進する観点から、FIT制度の認定要件として地域活用要件が新たに追加された。既に10キロワット以上50キロワット未満の太陽光発電設備については、令和2年度より地域活用要件が導入されていたが、今回の改正により、1,000キロワット未満の水力発電設備及び地熱発電設備、並びに10,000キロワット未満のバイオマス発電設備にも対象が拡大された(注16、17)。令和5年度からは陸上風力発電設備のFIT新規認定にも拡大される予定である(注18)

 今回の改正で追加された地域活用要件には、発電された電気の3割以上を自家消費すること等の「自家消費型・地域消費型」と呼ばれる類型(3種類)と、発電設備の設置場所を管轄する地方公共団体との間で災害時を含む電気又は熱の当該地方公共団体内への供給が合意されていること等の「地域一体型」と呼ばれる類型(3種類)がある(施行規則5条1項12号の2)。FIT制度の認定を受けるためにはこれらのいずれかを充足する必要があり、また、FIT認定を維持するためには調達期間にわたって当該要件の充足を維持する必要がある。

(2) 経済的出力制御

 電気の供給過剰となった場合、需給のバランスをとるために出力制御がなされる。出力制御の方法には、前日段階で出力制御の実施を判断する必要があるオフライン制御と、出力制御用機器により当日に実需給に近い柔軟な運用が可能なオンライン制御がある。効率的な出力制御の観点からはオンライン制御が望ましく、オンライン制御ができない設備(以下「オフライン設備」という。)のオンライン化が進められているが、全てオンライン化するのは実務上困難であり、経済的出力制御(オンライン代理制御とも呼ばれる。)という新たな方法が導入された。

 経済的出力制御とは、オンライン制御が可能な設備(以下「オンライン設備」という。)が、オフライン設備の代わりに出力制御を行った上、法令上は、当該制御期間中に、オフライン設備が発電した電気をオンライン設備が発電した電気とみなすことで、実質的にオフライン設備がオンライン設備と同様に出力制御を行った形を創出するものである(施行規則14条の2)。制御期間については、オフライン設備は実際に発電を行うものの対価は得られない一方、オンライン設備は発電は行わないものの金銭を受領できることとなる。対象となる電源は、FIT制度を適用する10キロワット以上の太陽光発電設備とされている(注19)

4 おわりに

 以上、再エネ特措法及び

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筆者

森 宣昭

森 宣昭(もり・のぶあき) 

 2005年、東京都立大学法学部卒。2007年、東京大学法科大学院修了(J.D.)。司法修習(61期)を経て2008年、第二東京弁護士会登録。2011~2012年、株式会社日本政策投資銀行出向。2016年、Boston University School of Law修了(LL.M. in Banking & Financial Law)。2016~2018年、Marubeni Middle-East & Africa Power Limited (ドバイ)出向。2018年、ニューヨーク州弁護士登録。2022年1月、西村あさひ法律事務所パートナー就任。
 主な論文・書籍に『ファイナンス法大全(下)』(全訂版、商事法務、2017年12月)がある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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