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国立国会図書館による五輪組織委サイトの保存・公開ストップ、そのままきょう閉鎖へ

藤澤直樹、奥山俊宏

 30日に解散する公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(事務所=東京都新宿区西新宿2丁目、会長=橋本聖子参院議員、事務総長=武藤敏郎・元財務事務次官)の公式ウェブサイトについて、国立国会図書館の「インターネット資料収集保存事業(WARP)(注1) 」による公開が年明けからストップしている。組織委のサイトはきょう6月30日午後6時に閉鎖されるが、関係者間の話がつかず、その最後の姿の収集・保存も不可能な状況となっているという。国立国会図書館法の規定に基づき同図書館は国や自治体など公的機関のウェブサイトを許諾なしで保存・公開する権限を持つが、組織委は民間団体の扱いでその対象外。組織委は取材に対し、大会の「レガシー」(遺産)を国内に残していくため、過去のウェブサイトを含む「アーカイブ資産」を国内関係者に引き継ぐべく、現在、国際オリンピック委員会(IOC)など関係者間で「調整中」だと返答した。

▽筆者:藤澤直樹(上智大学文学部新聞学科4年)、奥山俊宏(同教授)

▽関連資料:大会組織委員会の回答の全文

▽関連資料:国立国会図書館WARPの当該ページ

 

拡大東京五輪・パラリンピック組織委員会のウェブサイト=2022年6月30日午前
 組織委のサイトは6月30日午前時点で、開閉会式が行われた国立競技場など東京の夜景に「#ARIGATO」の文字を浮かび上がらせた画像をトップページの冒頭に配し、その下に「組織委員会の解散について」の28日付の最新のお知らせ、21日付の「公式ウェブサイト閉鎖のお知らせ」、大会経費の最終報告、21日開催の最後の理事会の報告などへのリンクを載せている(注2) 。21日付で公表した公式報告書のほかに、発注工事や業務委託の競争入札の結果(注3) 、調達ルール違反に関する通報の処理状況(注4) などの情報も掲載して公表している。これを30日午後6時に閉鎖する、という。

 この組織委の公式サイトについて、国立国会図書館は2015年9月に収集と保存を始め、以後、昨年12月24日までの6年3カ月あまりの間に合計28回にわたって、そのときどきのサイトのデータを図書館側のサーバーに保存してきた。そこには、競技スケジュールや沿道の規制予定など、その時点ならではの情報が含まれていた。国会図書館はWARPのウェブサイトで、それらの過去のサイトをそのままの姿で公開していた。

拡大国立国会図書館のインターネット資料収集保存事業(WARP)の東京五輪・パラリンピック組織委員会のウェブサイトのページ=2022年6月30日午前
 ところが、昨年暮れごろをもって、その公開は止められた。外部からだけでなく、国会図書館の館内でも閲覧できなくなっており、該当のページには現在、「本資料は発信者からの申出により公開を停止しています」との注記が付されている(注5) 。収集・保存も途切れてしまっており、6月29日時点で、新たに収集・保存をすることができる状況にはなっていないという。

 取材に対する組織委員会の説明によると、組織委員会のウェブサイトのデータを含め、東京2020大会に関する権利は、東京都や国際オリンピック委員会(IOC)の関係者で締結した「開催都市契約」に基づき、IOCまたは国際パラリンピック委員会(IPC)に帰属しているという。現在、ウェブサイトを閲覧できない状態となっているのは、このためだという。

 国会図書館関西館のWARP(インターネット資料収集保存事業)担当者の説明によれば、同図書館は組織委員会との間で、ウェブサイトの保存・提供に関する許諾契約を結び、収集・保存・公開をしていたが、昨年末、権利が失効したため、暫定的に利用提供を停止しているという。

 国会図書館のWARPで、いったん収集・保存したウェブサイトについて、部分的に利用を制限する例はあるものの、サイト全体を丸ごと利用できなくした事例は他にないという。たとえば、「2002年FIFAワールドカップ日本組織委員会」のウェブサイトは今もWARPでだれでも見ることができる(注6)

 組織委員会は取材に対し、「大会レガシーを国内に残していくため、過去のウェブサイトを含むアーカイブ資産を国内関係者(日本オリンピック委員会/日本パラリンピック委員会、東京都)に引き継ぐべく、現在、IOCと国内関係者とで調整しています」と答えた。国会図書館の担当者は「日本オリンピック委員会と新たな保存・提供に関する契約の締結に向けて調整中です。契約の締結に至った段階で、利用提供を再開する方向で考えております」と話している。

 国立国会図書館は、組織委員会に限らず、JOCやJPCに加盟する競技団体やスポンサーのウェブサイトなど、東京五輪パラリンピックに関連する様々なウェブサイトを収集・保存・公開の対象にしてきた。

 図書館や博物館は、1964年の東京オリンピックに関する数多くの文書や映像による記録を保存し、今に伝えている。再び日本で開催されることになった歴史的イベントについても、我々は同様に、未来に伝えていく責務がある。そのためには、書籍や雑誌、新聞といった従来のメディアはもちろんだが、50年前には存在しなかったインターネット情報の保存が大きな課題の一つとなる。(福嶋聖淳(国立国会図書館関西館電子図書館課)、2020 年、「オリンピック・パラリンピック関連ウェブサイトのアーカイブと研究利用の可能性」『情報の科学と技術』70 巻 1 号 p. 17-22)

 そんな問題意識が背景にあった(注7) 。しかし、解散に向けての手続きが進む組織委員会のウェブサイトの最終形は、このまま30日にサイトが閉鎖されると、取り返しがつかず、永遠に保存されなくなってしまう可能性が強まっている。

 近年の五輪・パラリンピックでは、開催のレガシー(遺産)を将来に引き継ぐことの大切さが強調されるようになっている。東京2020大会後のレガシーを見据えた取り組みとして、東京都は「安全・安心」や「まちづくり」といった9つのテーマとSDGsをもとに「大会のレガシーを、都市のレガシーとして発展させ、都民の豊かな生活につなげていく」としている(注8) 。首相官邸のオリンピック・パラリンピックレガシー推進室では、大会終了後も取り組んでいくレガシーに係る政府の取り組みを公表しており、感染症対策や被災地の復興など17の項目を挙げ「発展や国内外への発信等」に努める方針だとしている(注9)

 上智大学文学部新聞学科の奥山ゼミでは今月、学生の一人が「東京五輪・パラリンピックのレガシーと新聞報道」をテーマに卒業論文のためのリサーチを行うことになった。その過程で、国会図書館のWARPで組織委の過去のサイトが非公開になっているのを把握。関連の資料や文献を調べるとともに、国会図書館や組織委に取材した。それに基づき、この原稿を作成した。

 ▽注1https://warp.ndl.go.jp/
 ▽注2:組織委員会、トップページ。https://www.tokyo2020.jp/ja/
 ▽注3:組織委員会、「調達(入札結果一覧)」。https://www.tokyo2020.jp/ja/organising-committee/procurement-tender/index.html
 ▽注4:組織委員会、「通報の受付及び処理の状況について」。https://www.tokyo2020.jp/ja/games/sustainability/status-of-the-reports/index.html
 ▽注5https://warp.ndl.go.jp/waid/23301
 ▽注6https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/236044/www.jawoc.or.jp/index.html
 ▽注7:福嶋聖淳(国立国会図書館関西館電子図書館課)、2020 年、「オリンピック・パラリンピック関連ウェブサイトのアーカイブと研究利用の可能性」『情報の科学と技術』70 巻 1 号 p. 17-22。https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkg/70/1/70_17/_article/-char/ja/
 ▽注8:東京都、2021年7月発行、「大会後のレガシーを見据えた東京都の取組」。
 https://www.2020games.metro.tokyo.lg.jp/T-Legacy-JP_Web_2202.pdf
 ▽注9:首相官邸オリンピック・パラリンピックレガシー推進室、「第4章 レガシーに係る政府の取組」『東京大会のレガシー』。https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tokyo2020_suishin_honbu/index.html

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