2022年07月22日
タックスヘイブン(租税回避地)の秘密ファイル「パナマ文書」を報道機関に提供し、世界各国の首脳たちの関わりを暴く契機をつくった匿名の人物が、6年間の沈黙を破り、記者のインタビューに応じた。22日、ドイツのニュース週刊誌「デア・シュピーゲル」のウェブサイトでその内容が公開された(注1)。国際社会ではこの6年、税逃れへの対抗策が具体化しつつあり、この人物は「パナマ文書の結果として行われた改革を誇りに思っているが、まだ不十分だ」と述べた。
パナマ文書は、タックスヘイブンでの会社の設立や維持を専門に手がける中米パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した1150万件、2.6テラバイトの電子ファイル群。2015年、匿名の人物によって南ドイツ新聞(ミュンヘン)のフレデリック・オーバーマイヤー記者とバスティアン・オーバマイヤー記者に提供された。南ドイツ新聞は国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ、事務所=米ワシントンDC)とそれを共有し、ICIJがデータベース化。朝日新聞を含む各国の報道機関の400人近くのジャーナリストが参加して分析と取材にあたった。2016年4月3日(日本時間4日未明)に一斉に記事の発信を始めた。
アイスランドのグンロイグソン首相(当時)、ウクライナのポロシェンコ大統領(同)ら10カ国の現旧指導者12人(のちの取材で14人に)を含む公職者140人の関係会社、英国のキャメロン首相(同)の亡父や中国の習近平国家主席の義兄の会社が見つかった。ロシアのプーチン大統領の親友のチェロ奏者ロルドゥーギン氏がタックスヘイブンの複数の会社の所有者となっており、そこに資金が流れ込んでいたことも判明した。
パナマ文書の報道が始まった直後、米国のオバマ大統領(同)は記者会見で「多くは適法だが、しかし、それこそが問題だ」と述べ、「不十分な法制度」是正への意欲を明らかにした。税逃れの撲滅に消極的だったトランプ政権を経て、バイデン政権が発足すると、2021年、国際社会は法人課税の最低税率を世界的に15%とする方針で合意した(注2)。
南ドイツ新聞にいた両オーバーマイヤー記者にパナマ文書を提供した人物は、「名無しの太郎」を意味する「ジョン・ドウ」を名乗り、報道開始1カ月後の2016年5月に両記者を通じて一度だけ声明を発表したが(注3)、それ以降は一切の発言を公にしていなかった。両記者はその後、南ドイツ新聞を離れ、今回のインタビューは「デア・シュピーゲル」のために両オーバーマイヤー記者によってインターネット経由で行われた。その原稿は、パナマ文書の報道に関わった世界各国の記者たちに事前に共有された。以下はその和訳
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