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《一問一答詳録》日本振興銀行新社長に就任した作家・江上剛氏が記者会見

 中小企業向け融資専門の日本振興銀行(本店・東京都千代田区)は14日、金融庁の立ち入り検査を妨害した疑いで前社長の西野達也容疑者(54)らが逮捕されたのを受け、社長交代の人事を決めた。新しい社長には、取締役会議長を務める社外取締役の小畠晴喜(こはた・はるき)氏(56)が同日付で就任した。小畠氏は作家の「江上剛(えがみ・ごう)」として知られる。

(寺西和男)

 逮捕されたのは、西野容疑者、前会長の木村剛(たけし)容疑者ら計5人。金融庁検査で、業務にかかわる電子メールを削除した疑いが持たれている。これを受けて振興銀は同日、臨時取締役会を開き、西野容疑者ら現職の役員3人を解任することを決めた。

 同日夕に記者会見した小畠氏は、5人が逮捕されたことについて「極めて重く、厳粛に受け止めている。お客様や関係者に大変な心配と迷惑をかけ、心からおわびする」と頭を下げた。

会見の冒頭、一礼する日本振興銀行の小畠晴喜新社長=14日午後4時59分、東京都中央区の日銀クラブ、金子淳撮影会見の冒頭、一礼する日本振興銀行の小畠晴喜新社長=14日午後4時59分、東京都中央区の日銀クラブ、金子淳撮影

 今後の経営については「もう一度原点に戻る」として、中小・零細企業向け融資専門の銀行という開業当初の目標を改めて追求する姿勢を示した。その上で「(同行の経営姿勢に)魅力を感じて一緒にやるような銀行があればいい」と述べ、他行との提携も検討する考えを示した。

 自らの社長就任は「緊急事態であり、お客様の不安を取り除くためには執行体制を早期に立て直さないといけない」と説明。金融庁から、9月末まで融資や預金の勧誘など一部業務の停止命令を受け、経営改善を求められているため、「我々取締役は9月いっぱい、業務改善計画の進捗(しんちょく)に全責任を負っている」と述べたが、10月以降も社長を続けるかは明言を避けた。

 ■第一勧銀で「改革4人組」の一人

 日本振興銀行の社長に就いた小畠晴喜氏は、経済小説作家の「江上剛」として知られる。ペンネームによる文筆活動やテレビのコメンテーターが「本業」だ。

 作家転身前は銀行マンだった。早大卒後、1977年に旧第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)に入り、築地支店長などを歴任した。97年に第一勧銀が総会屋に利益供与していた事件が発覚した際には、広報部次長として行内の改革を訴え、「改革4人組」と呼ばれた中堅行員の一人だった。当時の様子をもとに描かれた高杉良氏の小説「金融腐食列島」の主人公のモデルの一人とされる。

 2002年、合併を前に大リストラを進める銀行の現場を描いた小説「非情銀行」で作家デビュー。03年にみずほを退職し、作家業に専念した。木村剛容疑者らが「大手銀行が中小企業の資金需要に応えていない」として設立した振興銀の理念に賛同し、木村容疑者の要請を受けて04年6月から振興銀の社外取締役に就いている。

 ■「新体制のもと捜査に協力」

 日本振興銀行の小畠晴喜新社長と赤坂俊哉・社外取締役の記者会見は14日午後5時から、日本銀行内で開かれた。

 小畠新社長が冒頭、次のような趣旨の発言をした。

 「当社の西野達也・代表執行役社長、山口博之専務、渡辺勝也執行役および元役員の木村剛・元会長、関本信洋専務が本日、検査忌避容疑で逮捕された。かかる事態に至ったことについて当社はきわめて重く厳粛に受け止めている。お客様ならびに関係者のみなさまに大変なご心配とご迷惑をおかけしたことが大変申し訳なく、心からおわびする。逮捕された執行役3名は本日開催の取締役会で解任した。逮捕された代表執行役社長、西野達也の解任したことから、取締役会で社外取締役のわたくし小畠晴喜が代表執行役社長に選任されて取締役兼代表執行役社長に就任した。当社は今後、新体制のもと、捜査当局による実態の解明に協力し、全役職員が心を一つにして全力で業務の改善に取り組む所存だ。本日、検査忌避容疑の事実関係は捜査中なので、当社から説明できる状況ではない。なにとぞご理解たまわりたい。また、当社の再建に向け、なにとぞみなさまの暖かい支援をよろしくお願いいたします」

 礼をしたあと、小畠氏は記者の質問に答えた。質問と小畠氏の返答の概要は次の通り。

 ■「責任を果たす覚悟をしたので就任した」

 ――現役の社長が逮捕された重大な事態を迎え、後任の社長に就くとはいえ、業務改善計画の進捗に遅れが出るのではないか。このあたりの影響をどうカバーするのか。

会見する日本振興銀行の小畠晴喜新社長=14日午後5時12分、東京都中央区の日銀クラブ、金子淳撮影会見する日本振興銀行の小畠晴喜新社長=14日午後5時12分、東京都中央区の日銀クラブ、金子淳撮影

 「6月28日に業務改善計画を提出し、西野前社長と山口前専務と力をあわせて取り組んできた。彼らの献身的な執務ぶりは再建に向けての力強い足どりだったと思っているが、二人がこうした形で抜けたのは経営にとっての大変な痛手だ。ただ、10月の業務再開に向けて役職員一同必死に努力しているので、支障をきたさないように頑張っていきたい」

 ――今回の新体制発足について。暫定なのか恒久的か。取締役の執務と執行の両方をやるのは大変ではないか。

 「具体的には、とにかくこういう緊急事態なのでお客様の不満を取りのぞくためには執行体制を早期に立て直さないといけない。それに最善を尽くしていくつもりだ。我々取締役会は少なくとも10月に向け、9月いっぱい、計画の進捗に全責任を持っている。暫定的か恒久的かは現状のところ、お答えできる段階にない」

 ――こうした事態を受けて、預金の状況は。店頭の混乱はないか。

 「ご存じの通り当行は定期預金のみで、こういった事態についても早期に、体制を整えようとしているので、お客様についての動揺は、現状ではそれほど解約などの動きは目立っていない。なんとかみなさま方のご支援を頂いて風評被害のないようにこれからも頑張っていきたい」

 ――小畠さんが社長として就任した意味は。積極的か消極的か。どうとらえればいいのか。さらに当初、中小企業支援という崇高な理念を掲げてスタートしたが、債権買い取りに足を踏み入れ、このような状況になった。どう総括しているのか。

 「まさか、西野社長と山口専務が、かかる事態になるとは、ほんとうにあの、最悪の最悪のシナリオだと思っていた。ただし、私たち取締役会は、こういった経緯については責任を十分に感じていて、だれひとり社外取締役を抜けることなく経営の再建に取り組んでいる。そんななかで私が代表として執行を兼ねるのは、いわゆる責任を果たす、預金者、債務者のため、従業員のためにも責任を果たす、そう覚悟をしたので就任した。意義については、今後の取締役会の再建に向けての努力をみなさまに評価して頂いて、きちっとした経営になったら意義があったということだと思う。中小企業、零細企業

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