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検察、憲法の大臣不訴追特典を意識 昨年暮れの鳩山氏の取り調べ見送りで

 鳩山由紀夫前首相が母親から年間1億8千万円の資金提供を受けながらその事実を税務申告書にも政治資金収支報告書にも記載しなかった問題で、検察当局が2009年暮れに政治資金規正法違反容疑での鳩山氏の取り調べを見送った背景に、憲法75条が総理大臣に不訴追の特典を与えた趣旨に配慮する意図があったことが関係者の話でわかった。大臣でなく普通の人だったならば当然に取り調べられるケースだったという。鳩山氏は首相在任中、自民党議員から不訴追特典の放棄を求められたが、それに応じていなかった。

(奥山俊宏、村山治)

 憲法75条は「国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない」と定めている。総理大臣もこの場合は「国務大臣」に含まれると解釈されており、自分で自分の訴追に同意しない限り、訴追されえない。さまざまな迫害から閣僚を保護する趣旨の規定だとされており、捜査についてもその趣旨の尊重が求められる。

 鳩山氏の資金管理団体の政治資金収支報告書に、すでに亡くなった人の名前が献金者として記載されていた問題は昨年6月、朝日新聞の調査報道で発覚。市民団体が政治資金規正法の収支報告書虚偽記載の容疑で鳩山氏らを東京地検に刑事告発した。これを受けた東京地検特捜部の捜査で、実母から毎月1500万円、5年間で9億円が鳩山氏の側に提供されていることが明らかになった。このカネの一部が鳩山氏の政治活動の支出に充てられ、それを隠すため、個人献金があったようにでっげあげられ、ウソの事実が政治資金収支報告書に記載されていた。

 鳩山氏は昨年9月に首相に就任。憲法上の不訴追特典の対象者になった。また、特捜部の捜査を指揮する立場にある検事総長に対する指揮権を持つ法務大臣を任免できる権限も手にした。一方、鳩山氏は虚偽記載の容疑で刑事告発された被疑者でもあった。

 鳩山氏は記者会見などで偽装への関与を一切否定。実母からの巨額の資金提供についても「知らなかった」と弁明した。検察には「ご説明」と題する上申書を提出し、そこには「自分は政治活動に専念し、政治資金や個人資金の入出金や管理はすべて秘書に全面的に任せていた」と書かれていた。検察はその主張を受け入れ、鳩山氏とその母親を取り調べることなく、捜査を終結。昨年12月24日、秘書だけを虚偽記載の罪で起訴し、鳩山前首相本人は「嫌疑不十分」を理由に不起訴とした。

 関係者によると、検察部内には、「鳩山氏から事情を聴くべき」との意見もあったが、憲法上、内閣総理大臣には不訴追の特典があり、「憲法でそういうふうに守られている以上、現職総理を軽々に被疑者扱いしてはいけないとの意識が働いた」という。さらに「もし、取り調べがうまくいかず、成果がゼロだった場合、検察は、自らの体面を保つため、政権の足を引っ張っただけではないか、との批判を受ける。重大政策で多忙な現職総理を連日、何時間も聴取できないとすると、『調べた』という形を作るだけ。それなら不要、との判断からに取り調べを見送った」という。

 鳩山氏は首相在任中、2月5日の衆院予算委員会で、自民党議員から「国務大臣鳩山由紀夫君に対する訴追に関して、内閣総理大臣鳩山由紀夫として同意する」という事前同意書を出すべきではないかと迫られたことがあった。しかし、鳩山氏はその際、「総理であっても処罰を受けるものは受けるべきだ」と言いつつ、「出す意味もない

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