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民主党政権下での「公開会社法」検討、企業統治強化の方策は?

太田 洋

 民主党が制定を検討してきた「公開会社法」に経済界の関心が集まっている。制定されれば、日本の上場企業、そして資本市場の在り方に大きな影響を与えることが必至だからだ。会社法が専門の西村あさひ法律事務所の太田洋弁護士が、検討が進められている公開会社法案(会社法制見直し案)の方向と、ありうる企業への影響や問題点を分析する。(ここまでの文責は編集部)

 

会社法制見直しと企業統治の強化

西村あさひ法律事務所
弁護士   太田 洋

太田洋弁護士太田 洋(おおた・よう)
 1991年、東京大学法学部卒業、1993年に弁護士登録(司法修習45期)。2000年、ハーバード・ロースクール修了(LL.M.)、2001年に米国NY州弁護士登録。2001年~2002年に法務省民事局付(参事官室商法改正担当)、2007年に経済産業省「新たな自社株式保有スキーム検討会」委員。現在、西村あさひ法律事務所パートナー、日本化薬(株)社外監査役、電気興業(株)社外取締役、金融庁金融税制研究会委員。金融庁コーポレート・ガバナンス連絡会議にも参加。

 かねて民主党がプロジェクトチームを設置して検討してきた「公開会社法」構想に関連して、本年4月28日から法務省法制審議会の会社法制部会(部会長:岩原紳作東大教授)で会社法見直しに関する審議がスタートし、現在、審議は佳境に入っている。この問題に関しては、昨年9月25日に経済産業省が「企業法制の在り方に関する勉強会」(座長:神田秀樹東大教授)を発足させ、その成果等も踏まえて本年6月23日に同省としての提言(以下「経産省提言」)を公表しているほか、金融庁も本年4月22日にコーポレート・ガバナンス連絡会議をスタートさせるなど、各界で活発な議論が交わされている。

 この会社法制見直しのポイントは、千葉景子法相が本年2月24日に法制審に諮問する際に挙げた、企業統治の強化と結合企業法制(親子関係の形成・維持等に関連する法制)の整備の2点であるが、本稿では、紙幅の関係上、このうち、社会的関心も高い「企業統治の強化」に焦点を絞って、主な論点と検討の視角を提示することとしたい。

 ■企業統治強化の観点から検討されているポイント

 会社法制の見直し作業において、企業統治の強化の観点から提起されている内容は多岐に亘るが、主なものとしては、以下のようなものが挙げられる。すなわち、

(1)社外取締役の要件強化(社外取締役から「独立」取締役へ)、

(2)上場会社に対する「独立」取締役の選任義務化、

(3)株主総会の招集通知期間の伸長(2週間から1ヶ月に)、

(4)定時株主総会の開催期限の延長(基準日の3ヶ月以内から4~5ヶ月以内に)、

(5)株主の質問権の拡大(株主の「随時質問権制度」の導入)、

(6)会計監査人の選解任及び監査報酬の「決定権」の、取締役会から監査役会(監査委員会)への移管、

(7)委員会設置会社の機関設計の柔軟化(委員会設置会社については、取締役会の過半数が独立取締役である場合には、委員会の権限の全部又は一部を取締役会の権限とすることができ、また、取締役会の権限の全部又は一部を委員会の権限とすることができることとする等)、

(8)従業員代表監査役(監査委員)の選任義務化、

(9)監査委員会設置会社(指名・報酬委員会のない新たな形態の委

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