関係団体に都下水道局のOBが天下り
2010年07月29日
既存の下水道管の法定耐用年数は50年。東京都23区内の下水管1万5800キロのうち、現在は1割程度が耐用年数を超えている。市街地は地上の掘削が難しく、既設管を修復して延命させる様々な工法がある。高度成長期に整備された下水管が次々と寿命を迎えるため、今後も事業規模は拡大する見通しだ。
都が80センチ以上の大口径管向け修復工事で指定してきたのはSPRと呼ばれる工法。下水管の内側に塩化ビニルで新たな管を作り、そのすき間をモルタルで固定するものだ。
約25年前に都とTGS、都内業者、化学メーカーの4者が海外の技術を元に共同開発した。現在は都を除く3者が特許を持っている。施工業者がSPR工法で工事をするために支払う、特許使用料(施工実施権)は3等分され、TGSには年間約1億円の特許収入がある。
口径80センチ以上の下水管修復工事について、都の入札資料や施工計画書を調べると、2008年5月~昨年4月の1年間で51件(小口径部分を含む総額約160億円)の発注があった。すべての発注でSPRが指定され、他工法で特例的に採用されたのは、都の指定を申請中だったの試行中の2工法が2件だけだった。
第三者機関の技術審査証明を取っている大口径管向け修復工法は、SPRの他にも4工法ある。例えば、2006~08年度の名古屋市発注工事では、大口径管の35件中20件でSPR以外の2工法が採用されているほか、大阪市も2008年度に10件中、5件で別の2工法で施工している。
一方、都には2001~05年にSPR以外の3工法から正式採用の申請があった。都は4月、「門戸を広げる」などとして、工事現場で水を流しながら施工しないなどの条件付きで、試行してきた2工法を正式に採用した。
独自基準を設けてSPR工法だけを指定してきた理由について都は「SPRは下水管内に水を流した状態でも施工ができる」「機械化が進んでおり、仕上がりが確実」などと、優位性を説明。さらに「都の基準は公表され、明確化されている。これまで他の工法の参入を阻んできた事実はなく、いかなる業者や工法でも採用する態勢を整えている」と主張している。
だが、SPR以外の2工法は申請から採用までに時間が経過しており、ある業者は「この間にも、SPRに大きく水をあけられた」などと話している。これに対し、都は「実験で不具合が見つかった工法もあった。SPRの試行期間と比べても、これら2工法の正式採用が著しく遅いとは言えない」と反論している。
■指定工法の利益、天下りが享受する構図に
東京都が発注する下水道管の修復事業で、都が指定する特定工法が生み出す利益を、多くの都下水道局OBが再就職先で享受する構図も浮かび上がった。SPR工法の割合が多い工事ほど、入札における落札率が高止まりする傾向も見られ、都内のある業者は「SPRで下水道局OBを養う仕組みができあがってしまっている。都ににらまれるのを承知で、今後別の工法を選択する業者がいるかどうか」と嘆く。
施工業者が、特許工法のSPR工法で工事をするためには、まず「SPR工法協会」に入り、2千万~1億円の一時金を支払って施工許諾権を購入する。施工時は特殊な重機を「SPRレンタル」から借りる。同協会には入会金と年会費、TGSには施工許諾権料(特許使用料)の3分の1、TGSなどが出資するSPRレンタルにはレンタル料がそれぞれ入る。
下水道局OBの再就職状況を調べると、TGSの歴代社長7人のうち6人が下水道局長、1人が局本部長だった。同協会事務局の現在の職員は専務理事など5人が局OB。さらに、SPRレンタルの歴代社長には、TGS社長に「天下り」した元局長3人が再々就職していた。SPRレンタルはTGSと同じ建物で、部屋も隣だ。
TGSは、都が50%出資して1984年に設立した三セク。昨年8月時点で社員681人中、局OBが428人、派遣の現局員は175人で、全体の約9割を局関係者が占める。都の2007年度の監査報告書によると、TGSのSPR工法関係の特許収入は年間約1億円。帳簿上はTGSの自主事業収入に計上され、06年度の特許収入約1億5千万円のうち約7割を占めるなど、特許財源の主力だった。TGSは取材に「特許収入はSPRの新技術開発費や、開発に携わる職員の人件費に充てられている」と答えている。
局OBの再就職者が多い理由についてTGSは「都庁で
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