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「横峯議員関与」捜査の不自然な経緯 被害者弁護士が指摘

奥山 俊宏

 横峯良郎参院議員(民主党)が恐喝事件に関与したと東京第四検察審査会に指摘された問題で、検察審査会に審査を申し立てた事件被害者の代理人を務める高谷覚(たかや・さとき)、余頃桂介(よごろ・けいすけ)の両弁護士が記者の取材に応じた。両弁護士は、関係者の逮捕から不起訴に至る経緯の不自然さを指摘し、検察審査会の異例の言及について「そういう検察のぶれに警鐘を鳴らすという意味があるのならば、理解できる」と述べた。

  ▽筆者:奥山俊宏

  ▽関連資料:東京第四検察審査会が公表した議決要旨(AJ購読者限定)

  ▽関連記事:   《詳録》横峯参院議員が検察審査会の「恐喝関与」指摘を否定


 両弁護士は8月12日、虎ノ門法律経済事務所で記者のインタビューに答えた。

 2人は東京弁護士会の民事介入暴力対策特別委員会の委員を務めており、高谷弁護士は2009年6月15日、同弁護士会の民事介入暴力被害者救済センターの当番弁護士として、事件の被害者であるY氏の相談を受け、翌16日に面談した。「ヤクザとみられる男たちが店の中にたむろして入れ墨を見せている」というのが相談内容だったという。

 東京第四検察審査会が今年7月21日に公表した議決要旨によると、被疑者のT氏は、東京都渋谷区の飲食店の経営からY氏を排除し、売上金を喝取しようとくわだて、プロレスラーらと共謀の上、2009年6月13日夜、Y氏を怖がらせ、その日の夜は15万8760円、翌日の夜には15万7802円を喝取した、という疑いをもたれている。

 相談が最初に寄せられたのは、その翌日にあたる。高谷弁護士は、警察に被害届を出すようにとY氏にアドバイスしたという。

 店の経営をめぐるトラブルなど民事上の紛争ではなかなか警察は動いてくれないのがふつうで、高谷弁護士としては、このときもそんなに期待していたわけではなかった。しかし、あっさりと加害者らが逮捕されて、やや意外に思ったという。

 「警察は、プロレスラーが暴力団ではないことはすぐに分かったはず。ならば、ふつう、いきなり逮捕はしない」

 逮捕後まもなくT氏の側からY氏の側に示談(和解での解決)の申し入れがあった。高谷弁護士らは「和解にしたほうがいい」とY氏にアドバイスしたという。その和解交渉のため、7月21日、Y氏の代理人となることを引き受けた。

 「被疑者らの逮捕・勾留中、横峯さんの代理人だと称する人が私のところに連絡を入れて、和解への働きかけがあった。それで、やっぱり横峯さんがからんでいるのか、どうやら横峯さんとTがつながっているらしい、と思った」

 7月下旬には和解の案までできていた。高谷弁護士らがY氏から聞いた話によると、Y氏は和解に応じて被害届を取り下げたい気持ちに傾きつつあったが、警察からは「この事件を挙げたい。我々も頑張っている」と取り下げを引き留められたという。検事からは「国民の義務」とまで言われたという。ところが、突然、検事の態度が変わり、「全員釈放する」と伝えられたという。

 釈放されたことでT氏の側は強気に転じたように高谷弁護士らには感じられた。以後、和解が成立することはなかった。

 「Yさんはそれが悔しくて。これでは死んでも死にきれない。ダメもとでいいから、検察審査会に出してくれ、ということになった。私たちとしても、本人の気が済むなら、ということで、アフターサービスのつもりで審査申立書を作って出した」

 今年2月19日付で検察審査会に審査を申し立てた。しばらく検察審査会からは何の音沙汰もなかったが、2010年7月21日、電話があった。その日、議決要旨が公表された。

 「あわてて議決要旨の紙を受け取りに検察審査会に行った」

 「運が良かった。小沢一郎さんについて『起訴相当』が出た、そういう風に乗っかった面があるのかもしれない」

 東京第四検察審査会の議決要旨は「結論」として「起訴相当の結論に至った」と書いた上で、「なお」と続け、横峯議員の関与に触れている。検察審査会の審査の対象として申し立てられていたのはT氏一人。横峯議員は当事者ではない。検察審査会が審査対象でもない特定個人をそれと分かる形で糾弾するのは異例である。

 「『なお』以下は、筆が走ったという感じなんでしょうねぇ。どうしても書きたい、という思いがあったんでしょうか。行き過ぎという考え方もあるでしょう」

 しかし、高谷弁護士は別の見方を示した。

 「Tらが逮捕された当時は自民党の麻生政権だった。一方、民主党は取り調べの可視化を主張していた。(可視化に反対している)検察としては、自民党を支持していたと思う。ところが、衆議院が解散して、これはどう見ても確実に政権交代になる。そういう判断が(捜査や不起訴処分の背景に)あったとすれば、それはよくないですよね」

 東京第四検察審査会の議決要旨は、昨年の捜査で横峯議員の聴取が行われなかったことをとらえて、「余りにも不公平、適正を欠く捜査である」と非難している。

 高谷弁護士は指摘する。

 「この検察審査会の議決要旨は検察批判として書かれている。起訴するつもりがあるから逮捕したんでしょう。それを土壇場で釈放した。そういう検察のぶれに警鐘を鳴らすという意味があるのならば、理解できる」

 横峯議員を訴えるかどうかについては、まだ決めていない。

 「検察審査会に出した審査申立書には実は横峯さんの話はほとんど書いていないんです。『寿司屋に集め……』というところについては事実をまったく知らなかった。横峯さんの関与を示すどんな資料があるのか我々もまったく知らない。横峯さんの関与の話は、我々にとっては、伝聞の域を出な

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筆者

奥山 俊宏

奥山 俊宏(おくやま・としひろ) 

 朝日新聞編集委員。
 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部、特別報道部などで記者。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。 「後世に引き継ぐべき著名・重要な訴訟記録が多数廃棄されていた実態とその是正の必要性を明らかにした一連の報道」でPEPジャーナリズム大賞2021特別賞を受賞。 近刊の共著書に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に 『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
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