「国策捜査だ」と捜査のあり方を批判してきた鈴木宗男衆院議員の主張は、認められなかった。上告審で弁護側は憲法・判例違反や重大な事実誤認など9点で反論を試みたが、最高裁が判断を示したのは「北海道開発庁長官の職務権限」の法解釈をめぐる1点のみ。有罪の結論は揺るがなかった。
2002年春から秋にかけての東京地検特捜部の捜査は、数々の疑惑が国会で追及されるなど世間の注目が集まるなか、多方面で展開された。ただ、国後島の宿泊施設(通称ムネオハウス)をめぐる疑惑など、元秘書や外務省元分析官らは逮捕、起訴されたものの、鈴木議員本人まで立件されなかった事件もあった。「検察やメディアに狙い撃ちされた」と鈴木議員は不満を訴える。しかし、二つの収賄事件とも公判の場で、贈賄業者側がわいろの提供を認める証言をした。検察の主張に沿った形で最終的に刑事責任が認定された事実は重い。
公判などで鈴木議員は「私利私欲で動いていない」とも強調したが、息のかかった業者の便宜を図るために役人に働きかけ、その対価を受け取った構図を裁判所も認めた。内閣の要職にありながら、行政の公平性や政治への信頼を失わせたことは疑うべくもない。
「利益誘導」型の口利き政治こそが、この事件で問われたものだった。