上告棄却で鈴木宗男議員、失職・収監へ
■鈴木議員記者会見 検察批判を展開
会見で鈴木議員が怒りを最も向けたのは、自らを逮捕・起訴した検察と、有罪を認定した裁判所。「密室での取り調べ、一方的な調書、その調書を金科玉条のごとく最優先する判決。真の公正公平はどこにあるか」とまくし立てた。
▽この記事は2010年9月9日の朝日新聞に掲載されたものです。
上告棄却の決定が報じられた後、鈴木議員の事務所には多数の電話がかかってきたが、ほとんどは「権力に負けるな、頑張れ」という内容で、批判はなかったという。鈴木議員は「分かってくれる人は分かってくれる。権力に打ちのめされた人のために、できる範囲の中で頑張っていきたい」と力を込めた。
笑顔も見せながら話していた鈴木議員の表情が一転したのは、家族の反応を聞かれた時。「犯罪者の家族になる、犯罪者の子どもと言われるということについては申し訳ないという思いでいっぱいです」と話すと涙があふれ、娘が電話で励ましてくれたことについては「親として申し訳ないと思いながらも、ありがたい」と声を震わせた。
■政治活動「バッジなかろうとも、死ぬまで」
鈴木議員の記者会見の主なやりとりは次の通り。
「私自身、わいろをもらったという認識はないし、業者側もわいろは届けていないということは明確に言っている。密室の取り調べで検察の誘導によって作られた調書が判決で最優先され、それが真実かどうかということを最高裁で明らかにしてほしかった」
「司法の判断は判断としても、密室での取り調べでつくられた調書を金科玉条のごとく最優先する判決に、裁判所の真の公正公平はどこにあるのか。少なくとも心のある国民は分かってくれると思う」
「私はいかなる環境にあっても、この検察権力と闘っていく。青年将校化した一部検察官は冤罪を生んだ。足利事件の菅家利和さんしかり、厚生労働省元局長の村木厚子さんしかり。私は与えられた環境の中で、何をもって公正公平か、何をもって真実かということを、死ぬまで発信していきたいと考えている」
「ただ、国民の皆さんには、お騒がせしたこと、こういう司法の判断が出たことについて、申し訳ない思いでいっぱいだ。あわせて、支援者、後援者に対しても相済まない気持ちでいっぱいだ。しかし、事務所にも多数の人から『権力に負けるな、頑張れ』と電話があったと聞いている。一本も批判の電話がなかったと聞いて、やっぱり分かってくれる人は分かってくれる。逆に自信をもって、私の立場で償いをしながらも、同時に声なき声や権力に打ちのめされた人のために、少しでもできる範囲の中で頑張っていきたいと思っている」
――民主党代表選が佳境の時期に決定が出たことが、どのように影響すると思うか。
「非常に何か意図的な、政治的な判断ということがあったのではと思う。様々なことが絡まっているのかなと。最高裁が国民のための、司法の最高の場所であるかどうかも合わせ、皆さまに検証していただきたい」
――異議申し立てが認められなかった場合は。後継者などは決めているのか。
「異議の申し立てをして、結果がどうなるか分からないので、それが出てから色々考える。私の志はしっかりきちんと受け継ぐ者がいると考えている」
――家族とはどんな話をしたのか。
「家内をはじめ家族に対して一番つらいのは、『犯罪者の家族』『犯罪者の子ども』と言われること。申し訳ないという思いでいっぱいだ。特に、娘が心配をして、電話をくれました。非常に私を励ましてくれて、親として申し訳ないと思いながらも、ありがたい、と思った」
――今後の政治活動は。
「私は昭和44年(1969年)からこの永田町にいた男。政治とは切っても切り離せない人生ですから、死ぬまでバッジがあろうとなかろうと、アイヌ民族の権利の確立とか、政治は弱い人のためにあるということを、しっかり若い有為な人に訴えていきたい」
■検察幹部「贈収賄の典型」
鈴木議員の捜査を担当した検察幹部は、満足げに胸を張った。「一審、二審、最高裁と、検察の主張がそのまま、まったく訴因が削られずに認められた。典型的な旧来型の贈収賄だ」「鈴木議員がいろんな際どいことをやっていたのは間違いない」
ただ、検察にとっては明るい話題ばかりではない。無罪の公算が大きい厚生労働省元局長に対する判決は、頭の痛い問題だ。「それが終わらないと、浮かれたことは言えない」と語る幹部もいた。