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公益通報制度の実情、英米と市町村 消費者庁が調査結果公表

市町村、公益通報窓口未設置の理由 「優先度低い」「人手足りず」

奥山 俊宏

 公益通報者保護法の趣旨に従って内部の職員などから通報・相談を受け付ける窓口について設置予定のない市町村を対象にしたアンケートの結果が10日、消費者庁から発表された。「必要な制度ではあるが、優先度が低い」(29%)、「人手が足りない」(14%)、「同規模の市区町村も導入していない」(12%)などが未設置の主な理由だった。海外の主要国における内部告発者保護の法制度や裁判例などの最新動向を調査した結果も同じ日に公表され、そこでは、日本の公益通報者保護法の問題点を指摘する米政府当局者のコメントも紹介されている。


 ■市町村の窓口設置

 公益通報者保護法は、正当な内部告発(公益通報)を保護するため、通報者への解雇などの不利益扱いを禁止している。この法律やその制定の際の国会の付帯決議の趣旨に従って、消費者庁(旧・内閣府国民生活局)は、自治体に対し、コンプライアンスへの取り組みを強化し、職員からの法令違反等に関する通報を自治体内部で適切に処理するよう呼びかけている。

 職場の不正について内部の職員から通報を受け付ける窓口の今年3月末時点の設置状況について消費者庁が各行政機関にアンケートした結果によれば、国の府省庁、都道府県は例外なく窓口を設置していたが、市町村については、「設置している」は40%余にとどまり、過半数は未設置だった。

 このため、未設置または未回答だった市町村を対象に、8月時点の状況について、消費者庁が改めてアンケートし、この10日、その結果が公表された。それによると、回答があった自治体のうち、52%が「設置するか否かを検討中である」、17%が「設置する予定である」、10%が「設置した」だった。一方、「設置する予定はない」と回答した自治体が22%あった。

 「設置するか否かを検討中である」「設置する予定はない」と回答した行政機関に未設置の理由を尋ねたところ、829自治体から回答があった。「必要な制度ではあるが、優先度が低い」(241自治体)、「人手が足りない」(112自治体)、「どのようにして導入すればよいのかわからない」(70自治体)など、設置したくても設置できない事情を挙げた自治体が目立った。一方で、「(規模・組織の状況等からみて)通報者の秘密が守れない」(90自治体、11%)、「効果が期待できない」(75自治体、9%)など、設置を積極的に見送っていた自治体もあった。「同規模の市区町村も導入していない」(98自治体、12%)という回答もあった。

 ■海外の内部告発者保護制度

 同じ10日、「諸外国の公益通報者保護制度をめぐる立法・裁判例等に関する動向調査」の報告書も消費者庁のウェブサイトで公表された。消費者庁の委託を受けた株式会社クロスインデックスがとりまとめたもので、全部で243ページ。文献調査は米英加仏独豪など7カ国を対象に行われ、このうち米英については今年2月にワシントンDCとロンドンで関係者に直接インタビューした。報告書には、英米の関係者へのインタビューの結果が詳細に盛り込まれている。

 報告書によれば、米政府労働者の職業安全衛生局で内部告発者保護を担当しているニルガン・トレック部長は、日本の公益通報者保護法の英訳に目を通した上で「興味深い」とコメントし、その問題点として「法の強制執行、監視を行う政府機関がない」「メディアなど外部に通報した場合には保護が薄くなっており、これは悪循環である」と

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筆者

奥山 俊宏

奥山 俊宏(おくやま・としひろ) 

 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部、特別報道部などで記者。2013年から朝日新聞編集委員。2022年から上智大学教授(文学部新聞学科)。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。近刊の著書に『内部告発のケーススタディから読み解く組織の現実 改正公益通報者保護法で何が変わるのか』(朝日新聞出版、2022年4月)。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。 「後世に引き継ぐべき著名・重要な訴訟記録が多数廃棄されていた実態とその是正の必要性を明らかにした一連の報道」でPEPジャーナリズム大賞2021特別賞を受賞。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)、『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
 ツイッターはhttps://twitter.com/okuyamatoshi
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※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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