2010年09月16日
▽筆者:小暮哲夫
▽この記事は2010年9月16日の朝日新聞朝刊政策面に掲載されたものです。
■経営難ひとまず回避
気温が35度前後に上がった昼下がり、東京都墨田区の狭い路地の一角にある小さな印刷工場では、換気扇と扇風機が回っていた。かつて4人が働いていた工場で作業するのは、この道40年の経営者である男性(71)ひとり。「エアコンを使わなければ、電気代が月3万円節約できる」
6月、日本政策金融公庫から元金支払いを1年間猶予された。他の金融機関分と合わせて5月まで月45万円だった返済額は半減した。「本当に一息ついた。あのままでは、お金が回らなかった」。不況で企業のチラシなどの印刷が激減。2008年の世界金融危機前に月200万円あった売り上げは、今年4月には70万円に落ち込んでいた。
1992年ごろ、大手家電メーカーから世界展開する製品の取り扱い説明書の印刷を受注し、最新鋭のドイツ製印刷機を8千万円で買った。売り上げは当初5割増えたが、半年後、この家電メーカーの主力製品の生産拠点が海外に移り、説明書の印刷契約は打ち切られた。当時の借金が今も3500万円残る。
東京都渋谷区の不動産仲介会社社長(43)は今年4月、円滑化法のおかげで、大手銀行に毎月返していた190万円が金利払いだけの30万円になった。4年前は売上高が年4億円あったが、金融危機後、住宅市場は一気に冷え込み、昨年度の売上高は1億円に激減。「2千万円あった個人預金も返済に回し、底をついていた」と振り返る。
金融庁の速報値では、円滑化法が施行された昨年12月から今年6月末までに、約47万
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