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(9) 株式公開買付け(TOB)関連のインサイダー取引が増加

 ■TOB(株式公開買付け)関連のインサイダー取引の増加

佐々木課長佐々木 清隆(ささき・きよたか)
金融庁検査局総務課長
 東京都出身。1983年、東大法学部卒業後、大蔵省(当時)に入省。金融監督庁(現金融庁)検査局、OECD(経済協力開発機構)、IMF(国際通貨基金)など海外勤務を経て、2005年に証券取引等監視委員会事務局特別調査課長、2007年同総務課長。2010年7月30日より現職。
 これまでの連載で、市場の規律に関連する当事者として、金融庁や証券取引等監視委員会等の当局以外に、金融機関、証券会社、自主規制機関、公認会計士、弁護士、不動産鑑定士、税理士等の役割についてご紹介してきた。今回は、これら多くの当事者が関与する問題として、株式公開買付け(TOB)に関連するインサイダー取引についてご紹介したい。

 TOBは様々な目的のために行われるが、特に近年においては、企業環境を取り巻く厳しい状況を反映して、企業再編に関連するTOBの件数が増加している。それに伴ってTOB関連のインサイダー取引の摘発件数も増加している。

  H17/7
-18/6
H18/7
-19/6
H19/7
-20/6
H20/7
-21/6
H21/7
-22/3
インサイダー取引
摘発件数
14 18 23 25 34
うちTOB関連 0 0 5 6 11

 

 このようにTOB関連のインサイダー取引の摘発件数が増加している背景としては、TOBの件数が平成17年に50件であったものが、平成21年には79件に増加していること、TOBの対象企業の株式には通常プレミアム分が上乗せされた価格で取引されるためTOBの公表前に当該株式を取得してTOB公表後売却すれば確実に利得を得ることができることが大きいと考えられる。さらに、TOBの実務には買付企業、対象企業の役職員に加え、弁護士、公認会計士、税理士、フィナンシャル・アドバイザー(FA;通常証券会社、投資銀行が務めることが多い)、金融機関、デュー・ディリジェンス業者、印刷会社等多数の関係者が関与することから、TOBの公表前に非公開情報を知りうる関係者が多いこと、及びTOB取引のスキームの組成から公表までの期間が比較的長いことも、TOBに絡むインサイダー取引のリスクを高める要因となってい

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