2010年09月23日
▽この記事は2010年9月22日の朝日新聞に掲載された原稿に大幅に加筆したものです。
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その後、表情を変えず、村木厚生労働省元局長の裁判について、控訴を断念することもあわせて発表した。「上訴権を放棄する。判決を受け入れるべきだと判断した。基本に忠実な捜査を徹底するよう改めて指導に努める」と述べ、「村木元局長にご負担をおかけしたことを申し訳なく思っている」とおわびした。
質疑では、村木元局長の公判が始まってから最高検で担当した八木検事が補足した。
記者から繰り返し尋ねられたのは、大阪地検の幹部や同僚、部下の事務官らは全く知らなかったのかという点だ。「他の検事や事務官も知っていたら、罪に問われるのか」などと聞かれ、伊藤次長は「仮定では言えないが、そういうことも含めて徹底的に捜査をする」と力を込めた。約40分の会見で「徹底捜査」という言葉を何度も使い、原因究明と再発防止に検察として全力をあげる姿勢をみせた。
ただ、特捜部長や副部長らの関与について改めて聞かれた時だけ、「これから捜査をしないと分からない」と一瞬、声が小さくなった。
前田検事は20日の大阪地検の調べに対して「遊んでいて、誤って書き換えてしまった」と答えたとされる。この点について最高検の認識を問われると、伊藤次長は「証拠隠滅罪は故意犯。我々は過失ではないと考えている」と明確に否定した。
村木元局長の控訴断念が今回の不祥事と関連があるのかも繰り返し聞かれたが、伊藤次長検事は「全く関係ない。この問題が起きなくても、控訴はしなかった」と断言した。
質疑の主なやりとりの概略は次の通り。
■「中途半端なことはしない」
――郵便不正事件の他の被告の扱いは?
普通の立証を続けていく。今回の事件や、村木元局長の控訴断念とは証拠構造も違う。
前田君が担当した他の事件での問題は表になっていないが、徹底捜査の中で出てくればやる。いずれにしても中途半端なことはしない。
――前田検事はなぜ改ざんしたと?
これから捜査して明らかに。現時点ではよく分からない。
――認否は?
我々は捜査において認否はコメントしない。普通の捜査を進めていく段階。
――「反省する」と言っておきながら認否も明らかにできないのは矛盾している。
私はそうは感じない。認否を明らかにすると捜査に支障が出る場合があり、反省とは関係ない。今の段階では言えないことは言えないと述べざるを得ない。
――スピード逮捕に至った理由は?
表に出そうだと把握したのは昨日。今日までにどういう対応をとるか相談し、とにかく早急に着手するのが一番誠実な対応と考えてやった。事件自体は改ざんしたかどうかで、逮捕するに足る事実を把握して逮捕した。
――他の幹部の関与は?
今のところ他の人が関与したと把握していることはまったくない。今後、徹底的に捜査し、同じような人がいれば徹底的に捜査していく。
――他の検事や事務官も知っていて黙っていたとすれば捜査対象になるのか。
仮定の質問で一概には言えないが、そういうことを含めて徹底的に捜査して明らかにする。
――現在の前田検事の身柄はどこに?
身柄は大阪地検内で逮捕し、今も庁舎内だと思う。
――公判請求は大阪地裁か?
本日は大阪拘置所に留置し、勾留請求の判断をする。起訴するか否かに関することは、現時点ではコメントを差し控えたい。
――逮捕主体は?
最高検。
――これまでに最高検が逮捕した例は?
私が承知している範囲ではない。身内以外にもない。
■特捜部は除外して捜査チーム編成
前田検事に対する取り調べは最高検の検事が担当するのかという質問には、最高検刑事部の八木検事が「最高検検事か応援検事かどちらか。チームの一員がやる」と答え、伊藤次長検事がチーム編成を次のように説明した。
「最高検刑事部の検事を主任とし、他部や他庁から応援を取り、検事7人の態勢をとって、大阪に派遣している。一部は大阪高検だが。情が絡んではいけないので、特捜部は除外。郵便不正事件に携わった検事や、前田君と懇意の関係の検事も除外。中立かつ捜査力に優れた人を選んだ」
――迅速な対応は、前田検事の自殺の恐れなど特段の事情があったためか?
特段の事情はないが、可及的速やかにと。前田君に何かあったわけではない。
――村木元局長には逮捕や上訴権放棄を伝えた?
逮捕の話はしていないが、控訴しない、上訴権放棄については、この会見の前に大阪地検から弁護人に連絡をした。
――捜索の予定は?
捜査の内容はコメントできない。
■外部の人間を入れない検証
データ書き換えの方法に関する質問には、八木検事が「今後の捜査を待つしかない」と答えた。「本日は逮捕事実をそのままお伝えした。今後の捜査をまたないと発表できない」
村木元局長に対する捜査の検証やその終了の見通しについては、伊藤次長検事が「年内を目標にする」と答えた。
「事情に詳しい検事を出してしまったり、上村(虚偽の公文書を作成したとされる厚生労働省の)元係長はまだ公判中だったりするので、その関係を見ながらだが、いつまでもはできない。年内に結果をまとめる目標で検証する。八木検事もいるから、今日からやる」
検証に外部の人間を入れることはないのかという質問には、伊藤次長検事は「ない」と答えた。
■故意か過失か
――聴取対象は? 当時の幹部の多くは異動しているが、どの範囲でどの密度でやるのか?
必要なことは徹底的にやる。捜査の進み具合を見て、幅広くやることになるかもしれないし、そこまでもやらないことになるかもしれないし。
――事件の組み立て上、核となる証拠は? 主任検事の独断で改ざんしたとも思いにくいが、組織的な関与については改めてどのような認識か?
それも同じ。今後やってみないと分からない。
――過失による改ざん?
証拠隠滅は故意犯だから、
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