2010年09月23日
▽この記事は2010年9月23日の朝日新聞朝刊2面に掲載されたものです。
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■「大阪特捜の取りつぶし」に言及
「組織としての責任問題に取り組んでほしい。大阪地検特捜部の取りつぶしだけでは、世論は納得しない」
民主党の枝野幸男幹事長代理は22日午後、大阪地検特捜部検事の前田恒彦容疑者が逮捕されたことについて謝罪に訪れた法務省の西川克行刑事局長らに苦言を呈した。西川氏は「重く受け止めます」とうなだれるしかなかった。
前代未聞の失態に、就任したばかりの柳田稔法相も21日、法務省幹部らに「こんなことでは特捜は持たないぞ」と警告した。特捜部を解体せんばかりの勢いに、当局は戦々恐々だ。
政権与党からは公然と大林宏検事総長の更迭を求める声が上がる。警察官僚出身の亀井静香・国民新党代表は22日の記者会見で「こんなことが警察で起きたら、現場の課長や署長が責任をとるだけでは終わらない。立派な検事総長であれば、当然自分で(責任の取り方を)わかっているのではないか」と述べた。民主党幹部も「検事総長は間違いなくクビだ」と話す。
民主党の小沢一郎元代表は22日、個人事務所を訪れた衆院議員に対し、前田容疑者による証拠改ざんについて「ひどいな、ひどいな」と漏らしたという。前田容疑者は小沢氏の資金管理団体をめぐる政治資金規正法違反事件で小沢氏の元秘書を取り調べた。
同事件では検察審査会が10月末までに小沢氏を強制起訴するかどうか議決する見通し。今回の不祥事が、議決に与える影響については、歯切れのよいセリフはまだ聞こえてこない。
仙谷由人官房長官は22日の会見で言葉を選びながら語った。「そこがひとつの争点になる可能性はあると、一般論としては言える。だが、だからどうだという論評はしかねる」
一方、法務省幹部の一人は、政権与党側から検察トップの進退に関する発言が出たことに驚きを隠さなかった。「これまでなら政治の側も発言を控えてきたはず。ただ、前代未聞の不祥事をした以上、こちらからは何も言えない」と言葉をにごした。
検察庁法には、法相は個別の事件については検事総長のみを指揮できるとする「指揮権」が定められている。この規定は本来、現場の検事への直接的な政治介入を防ぎつつ、検察を民意のコントロールのもとに置こうとバランスを考慮した制度とされる。
戦後、発動されたのは一度だけ。1954年の造船疑獄で犬養健法相が発動し、佐藤栄作自由党幹事長が逮捕を免れた。吉田茂内閣は世論の大きな批判を浴び、犬養法相は辞任に追い込まれた。以後、政権も検察に一定の距離を保つ慣行ができていった。
だが、昨年の民主党政権の発足後、こうした状況が変化する。千葉景子前法相は就任時に「検察の暴走を民意がチェックする」「指揮権を絶対使わないということではない」と発言。「民主党政権は発動に積極的なのか」と法務・検察内に緊張が走った。
検察人事への介入をほのめかす発言が民主党内から聞かれても、6月に就任した大林検事総長は、検察内部の序列に従った通常の人事だった。
今回の郵便不正事件の捜査で最終的な決裁をしたのは、大林総長と入れ替わった樋渡利秋・前検事総長。現職の総長が懲戒処分を受けた過去のケースは、2002年に詐欺、収賄などの罪で起訴された大阪高検公安部長への監督責任を問われて戒告処分を受けたのが唯一だ。
今回の場合、捜査当時の大阪地検検事正、次席検事、特捜部長ら決裁にかかわった幹部らは監督責任に加え、データ改ざんを把握しながら放置した疑いもあり、最高検による捜査や検証の結果を待って処分を受ける可能性がある。
ある検察幹部はこう語る。「従業員が不祥事を起こせば社長が責任を取るのは当然。でも、事実関係が分からないとどうしようもない」
■取り調べ可視化に追い風
検察への信頼が根底から揺らぐ事態に、取り調べの全過程を録画・録音する「全面可視化」を求める与党議員らはにわかに勢いづいている。
鳩山由紀夫前首相や民主党の小沢元代表の「政治とカネ」の問題がくすぶっているときは、「可視化」を正面から持ち出すことは、検察の捜査への圧力と受け取られかねないとして、はばかられる雰囲気もあった。だが、今回の不祥事で状況が一変した。
村木厚子・厚生労働省元局長の無罪判決では、取り調べの誘導を問題視し、検察側が描いた事件の構図の大半を否定。さらに、その主任検事による証拠隠滅容疑の発覚は、検察捜査全体への不信感を増幅させた。このため、「検事の取り調べは信用できない」とする声が急速に強まったからだ。
民主党は昨年夏の衆院選マニフェストで「取り調べの可視化で、冤罪を防止する」と明記した。しかし、今年夏の参院選では、党内の意見がまとまっていないとの理由でマニフェストに盛り込むことを見送っていた。
それだけに、議連側は「大きな
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