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改ざん(上) 「前田検事が大変なことを」 地検幹部封印「問題ない」

 静かな土曜の午後だった。

 大阪市内を望む25階建ての大阪中之島合同庁舎(大阪市福島区)にある大阪地検。その一室で今年1月30日、2人の検事が、特捜部の当時の副部長と向き合っていた。1人は目に涙を浮かべていた。

 「前田検事が大変なことをした。村木さんは無罪だ」

 思わぬ「告白」に、副部長は一喝した。「確認ができているのか、慌てるな」

 「大阪地検のエース」と言われた大阪地検特捜部検事の前田恒彦容疑者(43)の証拠品改ざん疑惑が上司に伝わった瞬間だった。

  ▽この記事は2010年9月23日の朝日新聞に掲載されたものです。

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 ●同僚に電話で告白

 副部長と向き合った一人は前田検事と郵便不正事件の捜査にあたった同僚だった。副部長と会う数日前に前田検事と電話で話し、この疑惑を知らされていた。

 虚偽有印公文書作成・同行使罪で起訴された厚生労働省元局長の村木厚子氏(54)=無罪確定=の初公判が開かれたころだった。同僚検事が公判の状況を伝えると、前田検事は「フロッピーディスク(FD)に時限爆弾を仕掛けた」と語り、打ち明けた。「FDの最終更新日時を変えた」

 FDは、村木氏の部下の元係長上村勉被告(41)=同罪で公判中=の自宅から押収されたもので、自称障害者団体が郵便割引制度の適用を受けるための偽の証明書が文書登録されていた。その最終更新日時が昨年7月、「2004年6月1日」から、「6月8日」に書き換えられていた。証明書の発行時期が、「村木氏が上村被告に6月上旬に指示した」とする検察側の主張に沿う形になり、FDは上村被告側に返却されていた。

 驚いた同僚検事はまず、同事件の公判を担当する検事に「前田検事が更新日時を変えたらしい」などと伝えた。話を聞いた別の公判担当検事も「それは大変だ。上に報告しなければ」と騒ぎ始めた。

 前田検事は広島大を卒業し、1996年に検事に任官。東京地検特捜部が手がけた防衛装備品の調達をめぐる汚職事件の捜査などで、キーマンとなる関係者の取り調べを担当

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