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グリーンピース鯨肉持ち出しに青森地裁が有罪《資料も》

 ■「公益のための触法」許される余地は?

 GPJのメンバー2被告が控訴したため、2人が肉を持ち出した行為が公益目的に照らして正当行為かどうかの論争は、高裁に舞台を移すことになる。

  ▽筆者:中井大助、有近隆史


 公益目的を理由に、本来なら法に触れる行為が認められる余地はあるのか。今回の判決で青森地裁は、「調査活動がいかに公益を目的とした正当なものであっても、許容される限度を逸脱しており、強い非難は免れず、刑事責任は軽視できない」と述べ、被告側の主張を退けている。

 こうした司法判断とは角度を変えて、政治哲学の世界ではどんな読み方が可能だろうか。

 「正義」を論じ合う授業が話題のマイケル・サンデル米ハーバード大教授とも交流がある小林正弥・千葉大教授(政治哲学)は「法律論ではなく、正義にかなうのかという側面から考えると、非常に興味深い問いかけを含む問題」と指摘する。

 小林教授は「グリーンピース側が主張する通りに鯨肉の横領があり、社会の共通の善が侵害されている場合は、窃盗より横領に対する告発の方が善として優先される可能性もある。形式的に有罪でも正義にかなう、ということはあり得る」と語る。

 さらに「法律は社会を運用するためのルールだが、すべてをカバーできるというわけではない。問題となった行動が本当に正義であれば、起訴をしないという選択肢もある」とも話した。

 視点を海外に移し、欧州人権条約を批准する各国が加盟する欧州人権裁判所を持つ欧州ではどうだろうか。

 NGOやジャーナリストが自国の裁判で有罪となった判決が欧州人権裁判所で取り消されることもある、とGPJ側証人として出廷したベルギーのデレク・フォルホーフ教授は証言している。

 同教授によると、ラトビアの環境NGOが市長の名誉を傷つけたとして有罪判決を受け、賠償支払いを命じられた件がある。欧州人権裁判所は告発の真実性が十分に証明されたと判断。公共性の高い分野での告発だったことを踏まえ「有罪は欧州人権条約に反する」と認めたという。

 目的のために手段は正当化されるのか。この裁判は、古くて新しい問題を社会に投げかけている。

 

 <調査捕鯨の鯨肉>
 調査捕鯨は日本鯨類研究所(鯨研)が政府の許可と補助金を受けて1987年から実施し、共同船舶(本社・東京)が請け負う。クジラの耳あかや胃の内容物などから生態を調べる。「副産物」として得られる年約4千トンの鯨肉は、共同船舶が国内の加工業者などに販売。高級部位のウネスは15キロ当たり5万円以上という。販売分と別に、船員向けの「土産」という鯨肉が船員約200人に1人約4キロ、計800キロが無償で渡され、共同船舶が鯨研に鯨肉代を支払う。水産庁は「長く行われてきた慣例」と説明している。

 

 

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