起訴するかしないかを決める権限と裁量を検察官に与え、かつ、独占させる起訴便宜主義、起訴独占主義は長らく日本の刑事司法の鉄則の一つだったが、この秋、それが揺らいでいる。検察審査会による起訴議決は、起訴便宜主義、起訴独占主義の制度にも適合したものであるべきなのか、それとも、それらに風穴を開ける「枠外」の新たな制度であるべきなのか、元東京地検検事の山本憲光弁護士が考察した。(ここまでの文責はAJ編集部)
検察審査会の「いま」
西村あさひ法律事務所
弁護士 山本 憲光
■はじめに
山本 憲光(やまもと・のりみつ)
1991年、東京大学法学部卒。司法修習47期。1995年検事任官、東京地検、法務省民事局などを経て、2006年に退官、弁護士登録、西村あさひ法律事務所入所。専門は、一般企業法務、会社関係訴訟、公益法人法制、海事法、企業危機管理(コンプライアンス)、刑事事件等。
世紀の変わり目に合わせて動き出した我が国の司法制度改革は、裁判員制度や、法科大学院といった新たな制度をもたらし、それらの制度が実際に機能を始めた現在、いずれかに関する記事を報道で見聞しない日はないくらい、国民の関心を集めている。これらの新たな制度に対して、検察審査会制度は
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