2010年10月07日
■記者会見の次の日に
前夜は鳩山氏の会見やら、そのあとの原稿のまとめやらで、深夜まで作業に追われた。興奮しているそのときは何でもないのだが、翌日になってみると、肩はガチガチに固まって、ずっしりと重く、痛い。石のようになった肩を自分の手で揉んでいると、ふと、あることを思い出した。
「ああそうだ。鳩山事務所が修正申告した報告書を見に行かなければ……」
■総務省の閲覧室で
鳩山氏が依頼した五百蔵洋一弁護士は前夜の記者会見で「平成17年から20年の分は本日修正を行って総務省に届け出た」と話していた。
つまり、鳩山氏自身が自ら偽装と認めた個人献金者は、その修正報告書を見れば、一目瞭然である。昨日の会見ではどこを修正し、どこを修正していないのか、細かいところまでは明らかにしなかったため、それをきちんと確認する必要があったのだ。
さっそく、東京・霞が関の合同庁舎に入る総務省政治資金課を訪ねた。ここは都道府県をまたがって活動する政治団体の政治資金収支報告書を保管しており、一般の人にも閲覧が許されている。
担当者に「鳩山由紀夫さんの資金管理団体の友愛政経懇話会を見たい」と申し込んだ。すでに、他の記者も閲覧しているらしく、担当者は「ああ、またですね」といった感じだった。閲覧の申請書に自分の名前、住所、会社名を書き込み、報告書が出てくるのを少し待った。
「こんなに偽装していたのか」と改めて、怒りを感じていたとき、「あっ」と声を上げてしまった。
■読売新聞の記事
あることを思い出したからだ。それは前日、2009年6月30日の読売新聞朝刊に掲載された記事の内容だ。この日、読売新聞は自ら故人献金問題について取材した調査結果を公表した。読売の記事は次のように書き出されていた。
民主党の鳩山由紀夫代表の資金管理団体「友愛政経懇話会」が故人5人から寄付を受けたことが明らかになった問題で、実際に寄付をしていないのに「寄付者」として政治資金収支報告書に記載された疑いがあるケースが、新たに13人いることが読売新聞の調査でわかった。2003~07年分の収支報告書の記載内容を検証したもので、問題ある寄付の総額はすでに判明した分も含め、18人で計659万円に上った。
調査対象は、03~07年の5年間に寄付者として記載された個人147人のうち、鳩山代表とその親族、秘書などを除く142人。88人から回答を得た。
この結果、「記載通りに寄付した」というのは65人。本人や家族が「寄付した事実はない」と否定したのは、故人と判明していた5人も含め、東京、北海道、千葉、愛知、兵庫の計18人。うち故人だったケースは1人増え、6人になった。「はっきりと覚えていない」などとしたのは5人。(後略)
記事を要約すると、「2003~2007年に寄付者として記載された147人のうち、実際には、寄付していないのに、鳩山氏の政治資金収支報告書に個人献金者として名前を使われた人が新たに13人見つかった」というものだった。
私はこの記事を読んで、「ああ、147人にも一斉にあたったんだ。さすが読売だなあ」と思った。記事によれば、読売は、全国に散らばる個人寄付者147人のうち、88人から回答を得たという。
そして、注目すべきなのは、このうち65人が「記載した通りに寄付した」と回答したことだった。私は「65人も実際に寄付していたのか」と意外に思った。私が事前に事情通から聞いていたところでは、「ほとんどが偽装」ということだったから、「そんなに多くが」という思いが強かったのだ。
総務省の政治資金課からの帰り道、二重線がいっぱい引かれた鳩山氏の報告書と読売の記事が頭の中で重なり合うと同時に「矛盾」という二文字が浮かんだ。
「この2つの事実は一致しない。寄付者が65人もいたら、あのような報告書の修正にはならない」
もし、鳩山氏側の調査が正解なら、「実際には寄付していないが、マスコミの取材には『寄付した』と答えた人がいる」ということになるし、65人の寄付が事実なら、鳩山氏の調査、そして修正報告がずさんだったということになる。
■鳩山氏側「献金した」人も削除
果たして、どちらの言い分が本当なのか――。取材班
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