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果て(上) 「割り屋」の後輩重用 隠蔽指示あったのか

 「最強の捜査機関」と呼ばれてきた地検特捜部。そのエースに続き、元トップと元ナンバー2が逮捕された。エリート組織の内側で、検事らをむしばむ病理がはびこっていたのか。事件の背景に迫る。

  ▽この記事は2010年10月2日の朝日新聞社会面に掲載されたものです。

  ▽関連資料: 前大阪地検特捜部長ら逮捕の被疑事実要旨

  ▽関連資料: 最高検次長検事コメント全文

  ▽関連記事:   《時時刻刻》最高検、「徹底抗戦には徹底捜査で」


 「来るなら来い、という気持ちだ」。1日、最高検から呼び出しを受けた大阪地検特捜部の大坪弘道・前部長(57)は周囲に語り、大阪地検が入る大阪市福島区の大阪中之島合同庁舎に向かった。9月28日まで連続して聴取されたあと、有給休暇を取って親族宅に身を寄せていた。

 知人らにも電話し、身の潔白を説明していた。

 証拠品のフロッピーディスク(FD)のデータを意図的に書き換えたと聞いていないし、自分のところで握りつぶすほどばかじゃない――。

 前部長を知る検察関係者は「隠蔽が本当なら、自分に尽くしてくれた部下に情がわいたのか」と衝撃を語る。

   ■    ■

 大坪前部長は、中国山地の山あいの町、鳥取県智頭町出身。中央大卒業後、28歳で司法試験に合格した。「弱者を助けたい」と弁護士を志したが、大学OBの元検事から「検察は国民の最後のよりどころだ」と言われ、検事の道を選んだ。

大阪地検が入るビル(右)前に集まった報道陣=1日午後5時30分、大阪市福島区、中里友紀撮影大阪地検が入るビル(右)前に集まった報道陣=1日午後5時30分、大阪市福島区、中里友紀撮影
 若手時代、特捜部の応援に入った事件で、取り調べた中年の男が新婚と聞かされた。気の毒で逮捕をためらい、主任検事からしかられたことがある。情に厚く、相手の身になって考える。その人柄で、重要な供述を引き出す「割り屋」として開花した。

 東京地検特捜部時代、1995年のオウム真理教事件の取り調べで、幹部信者にサリン製造方法を語らせた。その前後に在籍した大阪地検特捜部でも数々の事件でキーマンとなる関係者の取り調べを任され、組織の期待に応えた。「大坪に助けられた」。特捜部OBは今でも感謝する。

 「不正義や欺瞞、癒着が隠れている。グレーに見える黒を暴くのが、

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