2010年10月05日
■大阪特捜の事件は影響なし?
大阪地検特捜部の主任検事・前田恒彦容疑者(43)が9月21日、郵便不正事件をめぐって証拠を改ざんした容疑で逮捕された。前田検事は今年1~2月に東京地検特捜部に応援に入り、陸山会事件の捜査の中で、小沢氏の元秘書・大久保隆規被告の取り調べを担当した。
しかし、今回の審査会の議決は9月14日付。証拠改ざん容疑が発覚する前のことだった。審査にかかわった関係者も4日、「大阪の事件は全く審査に関係ない」と語った。
また、大久保元秘書は収支報告書を提出する前の小沢氏との相談の場には、居合わせなかったとされる。4月の1回目の議決に続き、今回の議決要旨でも、大久保元秘書の供述調書の信用性については触れずじまいだった。
議決があったのが、ちょうど民主党代表選で小沢氏が敗れた日だった。そのため、この日付の意味をめぐり様々な見方が出ている。
東京第五検察審査会は、原則として火曜日に集まって審査をしていた。9月14日も火曜日。代表決定は午後3時半ごろだ。四宮啓・国学院大法科大学院教授は「何ら利害がない市民なので、単なる偶然だと思う」と話す。一方、司法制度改革に詳しい弁護士は「小沢氏が代表に選ばれてしまうと、審査会の判断によって社会に波紋が広がる。代表が決まって無用なプレッシャーがかかる前に結論を出したのではないか」と推測した。
その後、議決を公表するまでに、3週間近くかかったのは、審査員の意見を書面にまとめる作業に時間がかかったためとみられる。その過程で、大阪地検の事件が起きたため、議決内容の表現が変わった可能性は残るが、審査員らが口を開かない限り、その経緯は不明だ。
■法務・検察、弁護人、告発人の反応
長期にわたる捜査の末に出した結論を覆された形の検察。事件の決裁ラインにいた幹部の一人は「高検、最高検がしっかり証拠をチェックしたため、失敗しなかった事件だ」と、証拠改ざん事件との対比を強調してみせた。
「供述調書に頼ってはいけないという批判がある中、審査会はもっと絞り上げて供述を取れという。不思議な話だ」と首をひねった。
別の幹部は、小沢氏と秘書の虚偽記載をめぐる「報告・了承」に関する供述の評価について、切り捨てた。「具体的な内容を検討すべきなのに、『親分に不利益なことを言うわけがないから信用できる』など、推論ばかりだ」
検察はこれまで起訴権限を独占し、かなりの高い確率で有罪になる見込みがない限り、起訴してこなかった。元秘書らが概括的に収支報告書の内容を報告したものの、小沢氏が「虚偽」と認識していたというには不十分と判断した。今後も「起訴の基準」を変えるつもりはないという。
幹部の多くを検察官が占める法務省が心配するのは国会の行方だ。ある幹部は「臨時国会後の10月末に議決すると思っていたが、こんな時期に出るとは」と驚いた。別の幹部は「検察の信頼がここまで落ちているときに、また、検察官の取り調べのあり方がクローズアップされてしまう」と不安を漏らした。
小沢氏の弁護側の関係者は「結論は五分五分」とみていた。議決を読み、「周辺の事実や推論で結論を導いている。そんなことで、政治家本人を罪に問うていいのか」。さらに「法廷で黒白を」という指摘について、「刑事裁判の本質が変わっていく恐れを秘めている」と危惧した。
小沢氏を告発し、不起訴を不服として審査を申し立てたのは行政書士や元教師、元新聞記者ら約10人でつくる「真実を求める会」だ。代表の男性は「検察が有罪か無罪かを決めて前さばきするのではなく、国民の目が届く裁判という土俵に乗せてほしいという国民の要望が表れた当然の結果だと思う」と評価した。
■検察と検審の違い
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