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犯人隠避に問われた捜査幹部 いま、弁護士として自身の経験を講演

奥山 俊宏

 捜査機関幹部の立場にありながら犯人隠避の容疑で検事の取り調べを受けた――。そんな「強烈な失敗談」に、聞き手は引き込まれていく。芝昭彦弁護士(43)は、官庁や企業に依頼された講演でコンプライアンス(規範遵守)の重要性を説くとき、必ず冒頭で、自身の体験を引き合いに出す。

  ▽筆者:奥山俊宏

  ▽この記事は2010年10月20日の朝日新聞夕刊(東京)に掲載された原稿に加筆したものです。

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芝昭彦さん
 「ある夜、部下の一人がラリった状態で県警本部に来ました」

 講演で、芝弁護士は、時系列に沿って体験を話していく。

 東大法学部を出て、1991年(平成3年)4月、警察庁に入庁した。キャリアの警察官僚として、米エール大学大学院に留学したあと、29歳で神奈川県警の外事課長、100人近くを率いる組織の長となった。

 部下の覚せい剤使用疑惑が報告された1996年12月13日、芝さんは「部下の不祥事で組織に迷惑をかけることとなってしまった」「組織の長として大変申し訳ない」との思いを痛切に感じた。「私の責任です。後はすべてお任せします」。そんな心境だった。いわば思考停止状態となってしまった。

 県警本部長の判断は「事件を公にしないように」「不倫を理由に諭旨免職にしろ」だった。部下は覚せい剤使用の罪に問われることなく、職場を去っていった。「こういうふうに不祥事はもみ消すものなのか」。芝さんは、警察における組織防衛のあり方について、「洗礼を受けた」ような気分になった。

 1999年秋、警察不祥事が続々と明らかになる中で、3年前の事件が明るみに出る。芝さんはそのとき、東京・霞が関

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