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知的財産「棚卸し」の視点、リスクも把握

 企業価値を測る上で、ブランド力、特許、技術力など無形の知的財産の価値が重みを増している。財務諸表だけでは把握できない企業のいわば潜在能力をどうやって測ればいいのか。この夏に著書『知財デューデリジェンス』を出版したばかりの佐藤義幸弁護士がポイントを解説し、企業の採るべき視点を探った。(ここまでの文責はAJ編集部)

 

知財デューデリジェンスの視点と留意点

西村あさひ法律事務所
弁護士 佐藤 義幸

 ■はじめに

佐藤 義幸(さとう・よしゆき)
弁護士・ニューヨーク州弁護士
西村あさひ法律事務所パートナー
 京都大学法学部、ニューヨーク大学ロースクール(LL.M.)卒業。
 専門は、知財、IT、M&A、ベンチャー投資等の企業法務。
 戦後、わが国の企業の多くは、欧米から基本技術を導入し、その改良と勤勉な労働力により、高品質で低価格の製品を大量に製造販売して競争力を維持してきた。しかし、近年ではアジア諸国が低廉な労働コストと生産技術の向上を背景にして追い上げを図っており、企業にとっては、大量生産による価格競争型ビジネスでは、企業価値の向上を期待できない状況になりつつある。そのため、今日においては、企業価値を向上させていくための有効な経営資源として、付加価値の高い製品やサービスの提供を可能とする知的財産の重要性が飛躍的に高まっている。

 今日においては、企業経営において時間的要素の重要性がさらに増しているが、知的財産の獲得のためには、多大な費用と時間を必要とするのが通例である。そこで、「時間を買う」ために、他社から技術などのライセンスを受けたり、場合によっては知的財産の獲得を目的として企業買収(M&A)が行われたりすることも珍しくない状況にある。

 このように、知的財産は、経営資源としての重要性が高まり、取引の対象とされることも増えているが、一方で、知的財産は、不動産や機械設備のような有体物とは異な

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