2010年10月31日
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個人献金を「偽装」した鳩山氏側は、偽装を「偽装」するため、所得税還付の書類まで利用しようとしていたのだろうか。
■3年で113人分の書類が総務省から
わかりやすく説明すると次のようになる。一般の市民が個人で献金すれば、税務署に確定申告をする際に献金額に応じて所得税の控除を申請することができる。控除を受けるためには、その献金を証明するための書類が必要だ。鳩山事務所はその書類を求めて総務省に申請を出し、総務省の確認印付きの書類を取り寄せたというのだ。もし鳩山事務所が、鳩山氏に個人献金したとされる人にこれを送付し、献金者がこれを確定申告書に添えて税務署に提出すれば、税金の還付が受けられるというしくみだ。
総務省が明らかにしたところによると、同省は鳩山事務所に05~07年で延べ113人分の確認印付きの書類を発行していたという。
鳩山氏への献金はそのほとんどが偽装だった。つまり、架空の献金だったわけだから、そうした書類を発行することはウソに基づいてなされたわけだが、問題なのは、献金者が、その書類を使用して、不正に税の還付を受けていた場合だ。鳩山事務所の偽装だけではなく、献金した側も所得税法違反に問われかねない。
実際、1993年に横浜市の元市議や自民党代議士の後援会幹部らが架空献金による所得税の不正還付で有罪判決を受けたことがある。今回の鳩山氏の側も、「架空献金」をでっちあげ、その書類を113人分も用意していたのだから、その事実を知りながら、不正還付を容認していれば同様の罪に問われかねない。
そして、そうした人が多数に上れば、ことは鳩山氏だけで済まず、一般市民を巻き込むことで問題は格段に広がりを見せてくる。いや、そうした疑いがあるだけで国会は俄然、熱を帯びてきているのだ。
私も「これは変な方向になってきたな」と、想像を巡らせた。いままで鳩山氏側に勝手に名前を利用された「被害者」の構図で描かれてきたはずの個人献金者が、実際には献金していないのに、その書類を使用して税金の還付を受けていたとすれば、その人は不正還付というだけでなく、自分の利益のために鳩山氏の虚偽記載に加担したことになりかねない。つまり、最初から鳩山氏側と口裏を合わせていた可能性が浮上する。こんな疑惑が出てくるとは当初は思いつかなかった。
鳩山氏側が修正した報告書によると、修正後になお、報告書に名前を残している人、つまり、鳩山事務所が「実際に献金している」と認めた人の数は、05~07年で47人。それより66人多い113人分の還付書類が発行されているということは、少なくとも66人分の書類に事実と異なる記載があるということになる。そして、その書類の使われ方が焦点になってくる。税金還付を受けるために使われたのかどうか。
実際に、個人献金者のもとにそうした書類が郵送されているとすれば、この問題の発覚前から、勝手に名前を利用された人たちは、「おかしい」と気づいたはずだが、それまでそんな話は取材から出てこなかった。
では、書類はどこに消えたのか。
取材班は、個人献金者に所得税の還付を受けたかどうかを改めて聞いて回った。しかし、話の聞けた人のほとんどは「献金していないのだから、還付の手続きをしていない」か、「そんな書類が来た記憶は全くない」かだった。「私は還付したと思う」と返事をした人もいたが、「確定申告の書類が残っていますか」と聞くと、「わからない」「今言ったことは正確ではないかもしれない」と言い直した。
つまり、
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