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岐阜市の壁倒壊事故から1カ月、削られる安全対策費、「勝てば官軍」、工事のチェック進まぬ現状

 岐阜市の解体工事現場で外壁が倒れ、通行中の女子高校生が死亡した事故から14日で1カ月を迎える。ある解体業関係者は「起こるべくして起きた」と話す。解体業界では、価格競争の末に安全性が犠牲になることが横行しているという。法のチェックを受けず、安全に必要な経費を減らした危険な現場は各地にあると指摘している。

  ▽筆者:贄川俊

  ▽この記事は2010年11月14日の朝日新聞朝刊に掲載されたものです。


道路側に倒壊した壁の下敷きとなった女子生徒の救出作業をする消防隊員たち=2010年10月14日午後4時49分、岐阜市北一色6丁目、本社ヘリから道路側に倒壊した壁の下敷きとなった女子生徒の救出作業をする消防隊員たち=2010年10月14日午後4時49分、岐阜市北一色6丁目、本社ヘリから
 事故は、ステンレス工場の解体作業中、高さ約11メートルの外壁が長さ約18メートルにわたって突然倒れた。自転車で通りかかった岐阜県大垣市の高校2年川瀬友可里さん(17)が、その下敷きとなった。

 県警によると、作業をした業者は、外壁が倒れないようにワイヤで支えたり、歩道に警備員を配置したりする安全策をしていなかった。また、鉄骨の解体に必要な資格者を現場に置かず、倒壊防止策を含む作業手順を定めた計画書も作っていなかったという。現在、業務上過失致死の疑いで解体業者を調べている。

 ある解体業関係者は「こうした工事は日常茶飯事だ」と指摘する。業界では、不況で減った解体工事の奪い合いが続く。価格競争が激しく、この5年で1坪(約3・3平方メートル)あたり約3万円だった工事費の相場は半額程度に下がったという。それが、安全に必要な経費にしわよせされた。

 同じ重機を複数の現場で使い回すため、狭い場所なのに大きな重機で作業することや、法で定められた安全管理の講習会に参加しないことは珍しくないという。

 厚生労働省安全課によると、全国で2005年~09年に今回と同じように解体工事中の壁が倒壊し、少なくとも24人の作業員が壁の下敷きになって死亡した。

2005年4人 北海道、千葉、大阪2

2006年5人 福島、愛知、大阪2、兵庫

2007年4人 東京、京都、大分、沖縄

2008年5人 宮城、栃木、愛知、京都、兵庫

2009年6人 北海道、神奈川、滋賀、京都、大阪2

 

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