2010年11月16日
▽この記事は2010年11月16日の朝日新聞朝刊に掲載されたものです。
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■世論の波 迷う検察
「夕方までには判断できるだろう」。時折出てくる最高検の幹部は、そう言ってはまた、部屋に入って行った。
「誰がみても、明々白々に罰せられるべき事件とは言えない」。逮捕見送りを決めた後の夕方、検察幹部の一人はそう説明した。別の幹部は「世論も影響している」と語り、神戸海上保安部の男性海上保安官(43)の行為を擁護する声も考慮したことを認めた。
逮捕すべきかどうか。捜査当局に難題を突きつけたのは、保安官による10日の「自首」だった。コンピューターのアクセス記録などから犯人に迫る作業に取りかかっていた警視庁、東京地検の捜査は、全く捜査線上に浮かんでいなかった保安官の登場で、急展開した。
「自分がユーチューブに映像を投稿した。誰でも見られた」。保安官は投稿したことは認めながら、石垣海上保安部と那覇地検にしか存在しないはずの映像の入手方法については、当初はあいまいな供述を繰り返した。
協力者はいないのか。本当に海保内部で得た映像なのか。構図が読み切れない状態で捜査にあたることになった警視庁の幹部は「保安官の説明だけでは立件できない。客観的証拠をそろえる必要がある。捜査は始まったばかりだ」と漏らしていた。
捜査が進むにつれて明らかになったのは、海保内部での映像の管理の甘さだった。馬淵澄夫国土交通相が徹底管理を求めるまで、映像は組織内で広範囲に拡散し、不特定多数が視聴、入手できた。「一体、どこまで秘密として扱われていたのか」という疑いが浮かび上がってきた。
逮捕の必要性を見極めるためにも、「秘密の重さ」はポイントだ。流出した映像が外部に未発表で、見られるのは海保職員に限られる以上、国家公務員法上の秘密に該当するという認識は、検察内部でほぼ一致する。しかし、多数の職員が視聴できたことで、「悪質さの程度が低い」との判断に傾いていった。
同法の守秘義務違反の罰則は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金。「このくらいの犯罪で『自首』したにもかかわらず、逮捕までされるのかと思われる」。捜査が進む間、検察幹部の一人は、世論を見極めていた。
■現場になお「逮捕論」も
だが、逮捕見送りの結論についてなお異論は
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