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耐震偽装、「愛知県の責任なし」 総研に1億6千万円の損害賠償 名古屋高裁判決

 姉歯秀次・元1級建築士による耐震強度偽装の被害にあった愛知県半田市のビジネスホテルをめぐり、強度不足の建物に建築確認を出した愛知県に責任があるかどうかが焦点となった訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁は10月29日、賠償責任を否定する判断を示した。岡光民雄裁判長は「当時の建築確認に関する規定は審査に限界があることを前提としており、注意義務違反はなかった」と述べた。

  ▽筆者:志村英司

  ▽この記事は2010年10月30日の朝日新聞朝刊に出稿されたものです。

  ▽関連資料:   強度不足の建物に建築確認を出した県の賠償責任を認めなかった10月29日の名古屋高裁判決(裁判所ウェブサイトへのリンク)


 昨年2月の一審・名古屋地裁判決は「構造上の問題は通常の審査で当然に把握されるべきだった」として、同種訴訟で唯一、自治体側の責任を認めたものとして注目された。高裁は一審の判断を覆した一方、ホテルの開業を指導したコンサルタント会社「総合経営研究所」(東京都千代田区)の責任については一審に続いて認め、約1億6127万円の賠償を命じた。

 県と総研などを訴えていたのは、強度偽装で建て替えを余儀なくされた「センターワンホテル半田」を運営する半田電化工業(中川三郎社長)。ホテル建設にあたって総研と契約を結び、総研が選んだ設計会社が姉歯元建築士に構造設計を委託した。

 判決は、当時の建築確認について、担当する建築主事には「審査の時間的制約もあり、量的にも質的にも多くを要求していなかった」と指摘。強度が低いことは容易に見抜けたはずだとする原告側の主張に対して「建築士による意図的な偽装行為を予測することは難しい」と述べた。

 一方、総研の責任については「偽装に気付く義務があったのに怠った」とした。そのうえで、必要な耐震補強工事(2億2210万円)やホテル休業に伴う損害(7千万円)などを積算し、原告側が施工業者から偽装発覚後に得た2億円を差し引いて損害額を算出。一審が県と総研に連帯して支払うよう命じた約5700万円から増額した。

 高裁判決について、中川社長は「県の責任が認められず、本質的な責任の所在が明らかになっていない。敗訴に等しい」と話した。総研の代理人は同種訴訟で総研が賠償を命じられた例はこの訴訟の他にないといい、「到底納得できない。上告も考える」と述べた。県は「妥当な判決」とコメントした。

 ■「最後のとりで」、なお重み

 「時間的制約もあり、建築主事に量的にも質的にも多くを要求していなかった」。高裁判決は、当時の建築基準関係の規定や実務の状況を踏まえ、建築主事の確認作業が違法に問われる範囲を限定的にとらえた。自治体が被告となった同種訴訟では「形式的に

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