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公益通報者保護法、消費者庁が法改正に消極姿勢

奥山 俊宏

 来春に予定されている公益通報者保護法の見直しについて、同法を所管する消費者庁は11月24日、「法改正によって制度を見直すべき具体的事実・理由は十分に確認できていない」とする見解を明らかにした。公益通報者保護法の「当面」の時期の改正に後ろ向きの姿勢を示した格好だ。内閣府の消費者委員会の下に設けられている専門調査会は法改正について積極・消極の両論を併記した報告を年明けにとりまとめる見通しとなった。

 

 公益通報者保護法は、一定の要件を満たす内部告発を「公益通報」と定義し、勤務先の事業者は、公益通報をした労働者に不利益扱いをしてはならない、と定めている。小泉純一郎政権の下で、消費者庁の前身にあたる内閣府国民生活局が草案をまとめ、2004年3月に内閣の法案として国会に提出された。民主党は、この法案について、「公益通報者保護法案ではなく、公益通報抑制法案、公益通報思いとどまらせ法案であるという疑いが解消されるばかりか、ますます強くなった」(岡崎トミ子参院議員)などとして反対したが、2004年6月に可決・成立した。

 同法は2006年4月に施行されたが、その附則には「政府は、この法律の施行後5年を目途として、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」と定められており、来年春がその時期にあたる。法案を制定した際の衆参両院の附帯決議は、見直しにあたって通報対象事実の範囲や外部通報の要件などについて再検討を行うことを政府に求めている。このため、内閣府の消費者委員会は今年6月、公益通報者保護専門調査会を発足させて、議論を進めてきた。

 これまでの調査会の議論の中では、法が保護対象とする内部告発の範囲を拡大したり、報道機関など外部への公益通報の保護要件のハードルを低くしたりするべきとして法改正を求める意見が目立っており、10月17日の日経新聞朝刊は「企業の内部告発者、脱税などでも保護、消費者庁、対象範囲の拡大検討」という記事を掲載し、「報道機関などに直接告発しやすいよう通報手続きも改める。2012年の通常国会に保護法の改正案を提出する方針だ」と報じた。

拡大公益通報者保護専門調査会の会議=2010年11月24日午後4時、東京都千代田区永田町で
 一方で、「周知徹底が先」として法改正に消極的な意見も出された。11月24日に開かれた同調査会の第6回会議では、委員を務める渡邊佳英・大崎電気工業会長(東京商工会議所副会頭)が「この調査会での事例報告では、法律の欠陥や不備のせいで労働者を救えなかった事例は一つもなかったと記憶している。法律改正を必要とするほどの不都合な事例がないならば、無理に改正すべきではない。施行後5年の見直しの規定にしばられるべきではない。周知普及が重要で、拙速な改正は避けるべき」と述べた。

 消費者庁も11月24日の会議に「専門調査会で出された意見等に対する消費者庁の考え方」と題する書面を提出し、その中で

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筆者

奥山 俊宏

奥山 俊宏(おくやま・としひろ) 

 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部、特別報道部などで記者。2013年から朝日新聞編集委員。2022年から上智大学教授(文学部新聞学科)。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。近刊の著書に『内部告発のケーススタディから読み解く組織の現実 改正公益通報者保護法で何が変わるのか』(朝日新聞出版、2022年4月)。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。 「後世に引き継ぐべき著名・重要な訴訟記録が多数廃棄されていた実態とその是正の必要性を明らかにした一連の報道」でPEPジャーナリズム大賞2021特別賞を受賞。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)、『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
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