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最高裁第一小法廷、全員一致で小沢氏の抗告を棄却

奥山 俊宏

 民主党の小沢一郎元代表について「起訴すべきである」とした東京第五検察審査会の議決について、小沢氏がその効力の停止を求めた行政事件訴訟の手続きで、最高裁第一小法廷は11月25日、小沢氏側の抗告を棄却する決定をした。同日、その主文と理由を裁判所ウェブサイトに掲載して公表した。


 東京第五検察審査会の議決書によると、小沢氏の資金管理団体「陸山会」は2004年10月に東京都内の土地の代金として約3億5千万円を支払ったのに、小沢氏は、秘書らと共謀の上、陸山会の2004年分の収支報告書にそれに見合う支出を記載せず、一方、翌2005年の収支報告書にそのぶん過大な支出を記載した疑いをもたれていた。

 これらについて、小沢氏は政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いで刑事告発されていたが、東京地検は2月4日に嫌疑不十分を理由に不起訴とした。これに対して、東京第五検察審査会は4月27日、「不起訴処分は不当であり、起訴を相当とする」と議決。これを受けて東京地検は再び捜査したが、東京地検は5月21日、再度の不起訴処分をした。これに対して、東京第五検察審査会は9月14日、「別紙犯罪事実につき起訴すべきである」と議決し、これを10月4日に公表した。

 この議決書に添付された「別紙犯罪事実」には、当初の「被疑事実」にあった支出の記載の問題に加えて、陸山会が2004年10月に小沢氏から合計4億円の借り入れをしたのに、2004年分の収支報告書にこれらを収入として記載しなかった、ということも含められていた。

 このため、小沢氏はこの議決の取り消しを求める行政訴訟を起こした。さらに、それにあわせて、「重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止をすることができる」という行政事件訴訟法の規定に基づき、検察審査会の議決の効力の停止を申し立てていた。

 最高裁第一小法廷は11月25日の決定でこれを棄却し、その理由の中で、検察審査会の起訴議決について「刑事訴訟手続における公訴提起の前提となる手続きであって、その適否は、刑事訴訟手続きにおいて判断されるべきものであり、行政事件訴訟を提起して争うことはできない」と指摘した。白木勇裁判長ら5人の裁判官の全員一致の意見だった。

 最高裁が公表した決定理由は次の通り。

 1  本件申立ては,原々審以来,検察審査会法41条の6第1項所定の検察審査会による起訴をすべき旨の議決の取消しを求める訴えを本案として,上記議決の効力の停止を求める趣旨のものと解される。

 2  平成22年(行ト)第63号事件について

 抗告代理人則定衛,同阿部泰隆,同南裕史の抗告理由について

 民事事件について特別抗告をすることが

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筆者

奥山 俊宏

奥山 俊宏(おくやま・としひろ) 

 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部、特別報道部などで記者。2013年から朝日新聞編集委員。2022年から上智大学教授(文学部新聞学科)。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。近刊の著書に『内部告発のケーススタディから読み解く組織の現実 改正公益通報者保護法で何が変わるのか』(朝日新聞出版、2022年4月)。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。 「後世に引き継ぐべき著名・重要な訴訟記録が多数廃棄されていた実態とその是正の必要性を明らかにした一連の報道」でPEPジャーナリズム大賞2021特別賞を受賞。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)、『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
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