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裁判の場で営業秘密を公開されないためには

 憲法の規定する「裁判の公開」の原則のもと、民事訴訟や行政訴訟の記録はだれでも閲覧することができ、事実上、公開されたのも同然となる。しかし、一定の要件の下ではそれを制限することができる。守るべき営業秘密をむやみに外部にさらされることがないようにするためにはどうすればいいのか。その方法と限界について、西村あさひ法律事務所の宮塚久弁護士が解説した。

 

裁判の場における営業秘密の保護

西村あさひ法律事務所
弁護士 宮塚 久

宮塚 久(みやつか・ひさし)
 弁護士。1994年京都大学法学部卒業。1996年弁護士登録。税務、争訟、労務、事業再生、一般会社法務など幅広く取り扱っている。
 ■高度情報化社会下の情報管理

 インターネットの普及によってデータの複製、発信が容易になった現代において、ひとたび企業の秘密情報が明らかになってしまうと、その情報を完全に消し去ることは最早不可能と言わざるを得ない。一方、雇用の流動化に伴って、従業員のモラールも徐々に低下しつつあり、情報漏洩事件が後を絶たないのも実情である。そのため、各企業は、情報管理を徹底し、秘密情報が不特定多数に開示されることがないよう、慎重に対応する必要があるが、時としてこれに真っ向から衝突する公益的な要請にぶつかることがある。

 ■裁判になれば営業秘密は守れないのか

 このような要請としては、例えば、「裁判の公開」が挙げられる。これは、審理と裁判とを衆目下におくことによって裁判の充実と公正さを担保するため、憲法によって保障された制度(82条)であり、この制度の下で、裁判における情報は公開するのが原則とされている。この「裁判の公開」を実現するために、現行法令上、民事・行政事件の訴訟記録は、誰でも自由に閲覧することが認められ、利害関係の存在を明らかにすれば、裁判の当事者でなくとも訴訟記録

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